小児集団における NAFLD、NASH、併存疾患の診断に伴う課題

非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD) は、肝臓における脂肪または脂質の蓄積で、著しい NASH NAFLD ブログアルコールの摂取やウイルス感染が原因でないもののことです。NAFLD には、肝臓に過度の脂肪がたまる非アルコール性脂肪肝 (NAFL) や脂肪の蓄積と炎症による非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) をはじめ、肝線維症および肝硬変、さらには肝機能の喪失を伴う末期の肝疾患も含まれます。NASH は先進国における肝疾患の最も大きな原因で、主に肥満と 2 型糖尿病の罹患率の増加が影響しています。NASH および肝線維症の患者の一部は、肝不全や肝細胞癌または肝臓癌へと進行します。実際、NASH は数年のうちに肝臓移植の理由として第 1 位になると予測されており、リスクの高い患者の早期特定が重要となっています。

残念ながら、NASH と肝線維症を確実に診断する方法は、今のところ肝生検しかありません。ただ、この方法にはいくつか制限があります。そこで、末期肝疾患に進行するリスクのある患者様の積極的な治療を早期に開始し、進行を防ぐために、NAFLD の病期を判定するとともに、こうした高リスクの患者様を特定するための非侵襲性バイオマーカーが早急に必要とされています。NAFLD の診断や病期判定に加え、NAFLD の患者様における心血管疾患 (CVD) などの併存疾患を評価することも重要です。CVD は依然として、NASH 患者様の主な死因の 1 つです。成人では、NAFLD および NASH により、リポタンパク質プロファイルの動脈硬化発生率が高まることが分かっています。たとえば、NASH 患者様の多くが、代謝性疾患やインスリン抵抗性を有する人に特有のリポタンパク質プロファイルを持っており、動脈硬化発生性の小型低比重リポタンパク質 (LDL) 粒子の増加、大型高比重リポタンパク質 (HDL) 粒子の減少、大型超低比重リポタンパク質 (VLDL) またはトリグリセリド濃度の高いリポタンパク質粒子の増加などが見られます。

成人における NAFLD を診断し、病期判定するためのバイオマーカーと多変数解析アルゴリズムの特定に向けて進展はあるものの、こうした知見を小児患者の臨床治療に反映させることは依然として容易ではありません。幼児期の子どもには、門脈の組織構造に成人にはめったに見られない模様があり、青年期および成人期に入るにつれて消滅するため、NAFLD の初期形態であると考えられています。今日までに研究された集団のデータで、小児における NASH の診断に有用なバイオマーカーが、成人に使用できるバイオマーカーと同じではないことが示されているのはおそらくこのためです。1,2 したがって、小児におけるこの疾患を十分に特徴付け、また小児における NAFLD および NASH の負担の重さを十分に明らかにするためには、さらなる研究が必要です。

NAFLD および NASH の診断とは対照的に、小児におけるインスリン抵抗性や CVD などの併存疾患のバイオマーカーは、成人で特定されたものに近くなりがちです。たとえば、肝脂肪から、ヒスパニック系米国人の若者における CVD のリスクが予測できることが分かっています。3 成人における CVD のマーカーであり、NAFLD で増加するプラスミノーゲン活性化抑制因子-1 (PAI-1) は、NAFLD の小児におけるインスリン抵抗性、動脈硬化発生性の脂質異常症の組織学的重症度と密接に関連しています。4 さらに、ワシントン DC でこのほど開催された米国肝臓病学会 (AASLD) の年次会議でのプレゼンテーションでも、成人における CVD リスク評価と同様に、核磁気共鳴分光学測定法 (NMR) で測定されたリポタンパク質プロファイルが、NASH の小児患者様における CVD リスクの評価に有効であることが発表されました。この研究の重要な発見として、被験者である NASH および NAFL の小児患者様のリポタンパク質粒子と亜分画に 1) NASH における大型 HDL 粒子の減少および小型 HDL 粒子の増加ならびに HDL サイズの減少、2) トリグリセリド濃度の高いリポタンパク質粒子と NASH における全身性炎症のマーカーである GlycA の総数の増加という差異があることが明らかになりました。同研究の筆頭筆者で小児肝疾患研究の専門家である Emory University の Miriam Vos 博士は、次のように結論付けています。「NASH 小児被験者のリポタンパク質粒子のパターンは、NAFL 小児被験者のものと大きく異なり、これは、NAFLD に見られる CVD リスクの増加が NASH の小児患者にすでに存在することが示唆されました」。

小児 NASH の治療薬の臨床開発における課題

NASH や肝線維症の小児向け治療薬の開発における最大の課題に、反応の代理として機能する非侵襲性バイオマーカーがない点があります。NASH の診断と同様に、NASH および肝線維症の薬物治療を確実にモニタリングする方法は、肝生検しかありません。治験での治療をモニタリングするために、かなり短期間に何度も子供に肝生検を受けさせることは積極的には行われてきませんでした。アラニン・アミノトランスフェラーゼ (ALT) は、NASH や肝線維症に固有のマーカーではないにも関わらず、小児集団で実施されたいくつかの試験において代理エンドポイントとして使用されてきました。しかし、ALT レベルの監視には、ALT が NASH に固有のマーカーでないことをはじめとした制限がいくつかあります。したがって、非侵襲性バイオマーカーを用いて NASH や肝線維症を確実に診断する必要があるように、治験環境において薬物治療をモニタリングするための非侵襲性バイオマーカーが早急に必要とされています。

治療法の開発における課題のため、小児 NAFLD および NASH の治療薬で試験されているものはほとんどありません。メトホルミンとビタミン E は、ALT の減少をモニタリングすることによって小児で試験されています。しかし、これまで小児の肝生検やバイオマーカーの代替エンドポイントにおいて有意な改善をもたらす薬は見つかっていません。5 食事や運動など生活習慣の変化は、減量やバイオマーカー (NASH および肝線維症、ATL などの代理) の減少といったメリットをもたらしたものの5、生活習慣の変化を維持することは困難であり、ますます一般的になりつつあるこの小児疾患の治療で成功を続けるには、新しい治療法が必要です。NASH の治療法の探求に加え、肝臓の異常とそれに伴うインスリン抵抗性や脂質異常症に対処する小児医療への包括的アプローチも必要とされています。同 AASLD 会議で、NASH 臨床研究ネットワーク (NASH CRN) は、小児 NAFLD 患者様における糖尿病の高発生率 (1~2年で 8% が 2 型糖尿病を発病)を示す縦断的データを発表しました (要約 56)。そこで、糖尿病に急速に進行する患者様を特定し、進行を妨げるための治療法を考案できるよう、検査が必要であることが示されました。2 型糖尿病、肥満、NAFLD は密接に結び付いていることが多いため、減量を促し、2 型糖尿病への進行を遅らせる治療法は、NAFL から NASH や肝線維症への進行にも有益な効果をもたらす可能性が高いと考えられます。この 3 つの疾患に共通する脂質異常症を逆転させる療法は、CVD リスクの軽減にも有用となります。これは、脂質異常症が生後間もなく発現する集団に長期間持続する効果をもたらす可能性があります。

結論として、NAFLD は、肥満、代謝性疾患、2 型糖尿病のように、小児集団において有病率が増加している代謝性疾患であり、 NAFLD、NASH、肝線維症の診断ならびに治験における治療法のモニタリングに使用できる非侵襲性バイオマーカーを発見することは、成人集団と小児集団の両方において依然として満たされていない大きな課題です。進展はあるものの、これらの課題を解決し、差し迫った小児 NASH の蔓延を食い止めるには、さらなる研究を行う必要があります。


参照

  1. Jackson JA 他 (2017). Performance of fibrosis prediction scores in paediatric non-alcoholic fatty liver disease. J Paediatr Child Health, 1-5.
  2. Mansoor S 他 (2015). The evaluation of hepatic fibrosis scores in children with nonalcoholic fatty liver disease. Dig Dis Sci, 60:1440-1447.
  3. Jin R 他 (2015). Amount of hepatic fat predicts cardiovascular risk independent of insulin resistance among Hispanic-American adolescents. Lipids Health Dis, 14:39.
  4. Jin R 他 (2016). Association between plasminogen activator inhibitor-1 and severity of liver injury and cardiovascular risk in children with non-alcoholic fatty liver disease. Pediatr Obesity, 2016, 1-7.
  5. Vos MB 他 (2017). NASPGHAN clinical practice guideline for the diagnosis and treatment of nonalcoholic fatty liver disease in children: Recommendations from the Expert Committee On NAFLD (ECON) and the North American Society of Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition (NASPGHAN). J Pediatr Gastroenterol Nutr, 64(2)319-334.