C1498:急性骨髄性白血病(AML)のマウスモデル

著者:Dylan Daniel 博士 - サイエンティフィック・ディベロップメント部門ディレクター
Date: April 2017


急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄の白血球が急速に増殖する悪性疾患。米国では 2017 年に新たに AML と診断される人の数が 21,380 名、死者は 10,590 名にのぼることが予想されています。AML は、骨髄内にある脱分化した、または未分化の骨髄性白血球が過剰に増殖した結果として生じます。病気が進行するにつれて AML の芽細胞が血液やその他の二次リンパ器官で見られるようになります。症状には貧血や白血球の減少などがありますが、これは AML 細胞が増殖することによって骨髄内の正常な造血が抑制されるのが原因。AML の特性は複雑で、ゲノム変化と遺伝子発現プロファイリングによって定義されるさまざまなサブタイプがあります。治療は通常、集中的な化学療法で始まり、その後、耐えられる患者様については同種骨髄移植(BMT)が行われます。​​​​​​​​​​​​​​ 高齢者の場合は集中的な化学療法や BMT に耐えられないことが多く、そうした患者様には免疫療法などの身体が比較的衰弱しにくい治療が必要です。

C1498 is a murine AML cell line that arose spontaneously in a C57BL/6 mouse and grows aggressively in syngeneic mice. Our C1498 line has been luciferase- and mCherry-enabled to permit monitoring of whole body tumor growth by bioluminescence imaging (BLI) and quantification of tumor burden in isolated tissues by flow cytometry, respectively. C1498-luc-mCherry を同系 C57BL/6 マウスの静脈内に注入し、BLI でモニタリングを行うと、細胞の増殖が進み(図 1A)、 長骨(骨髄)とその他の播種部位にシグナルがはっきりと現れているのが分かります(図 1B)。

腫瘍増殖動態および典型的な BLI 画像

図 1A:C57BL/6 マウス体内の C1498-luc-mCherry の増殖動態(BLI)
図 1B:未処理マウス体内の C1498-luc-mCherry 腫瘍負荷の典型的 BLI 画像

図 1A:C57BL/6 マウス体内の C1498-luc-mCherry の増殖動態(BLI)

図 1B:未処理マウス体内の C1498-luc-mCherry 腫瘍負荷の典型的 BLI 画像

生存動態(罹患 / 死亡) (図 2A)は、生存期間中間値が約 23 日。その一方、疾患進行中の体重減少はありません。(図 2B)。

生存動態および体重変化

図 2:C1498-luc-mCherry AML が播種した C57BL/6 マウスの生存動態(A)と体重変化(B)

図 2:C1498-luc-mCherry AML が播種した C57BL/6 マウスの生存動態(A)と体重変化(B)

表 1 は、剖検時の肉眼的腫瘍負荷を評価したものです。腫瘍の大半は、肝臓、リンパ節、卵巣、脊柱に広がっていました。C1498 株の mCherry 発現を利用すると、動物の剖検時にフローサイトメトリーで組織腫瘍量の分析を行うことができます。リンパ節の mCherry+ AML 細胞で代表的なゲーティングを行った時のデータが図 3。21 日目には、リンパ節、卵巣、肝臓の全細胞に占める AML 腫瘍組織量(%)の割合が高くなっています(表 2)。

表 1:C1498-Luc-mCherry AML 腫瘍を持つマウスの組織で認められた肉眼的腫瘍病変発生率。

表 1:C1498-Luc-mCherry AML 腫瘍を持つマウスの組織で認められた肉眼的腫瘍病変発生率。

フローサイトメトリー ゲーティング戦略および組織のサンプリング

図 3:リンパ節サンプル中の mCherry+ C1498 AML 細胞を評価するためのフローサイトメトリー ゲーティング戦略。
図 2: 組織に占める C1498-Luc-mCherry+ AML 細胞の割合 (%)  (n=1)

図 3:リンパ節サンプル中の mCherry+ C1498 AML 細胞を評価するためのフローサイトメトリー ゲーティング戦略。
図 2: 組織に占める C1498-Luc-mCherry+ AML 細胞の割合 (%)  (n=1)

実際、AML 免疫療法の治験は複数進行しており、そのなかには抗-PD-1 / 抗-PD-L1 チェックポイント阻害剤を扱うものが 15 件以上含まれています。C1498 は、細胞培養で発現する PD-L1 量が少ないと報告されているものの、In vivo ではそれが大幅に増加します1。この In vivo での PD-L1 の発現は、モデルを、PD-1 の阻害による腫瘍の増殖の遅れに対して敏感なものにします。阻害時には、AML に罹患した肝臓内の CD4+ および CD8+ T 細胞の浸潤も著しく拡大します。こうした公開データは、C1498-luc-mCherry が、チェックポイント阻害剤による免疫療法を用いた併用療法を調べる上で理想的なモデルになり得ることを示唆しています。

Contact us to speak with one of our scientists to see how C1498-luc-mCherry or one of our other syngeneic models can be used for your next immuno-oncology study.


参照


1Zhang、T. F. Gajewski、J. Kline、血液(2009年)

注:すべての動物管理および使用は、AAALAC 認定を取得した施設にて IACUC 手順の審査および承認を経て動物倫理規制に従い行われました。

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