C1498-Luc-mCherry:同系急性骨髄性白血病(AML)モデル

著者:Sumithra Urs 博士 | サイエンティフィック・ディベロップメント部門サイエンティスト
Date: January 2019


急性骨髄性白血病(AML)は成人において最も一般的な血液悪性腫瘍で、診断後の 5年生存率は 25% 未満です。[1] 通常の高用量化学療法を受けた AML の患者様のうち、3 分の 2 は寛解に至りますが、そのうち 50% が寛解後に再発しています。再発のほとんどは最初の治療から 2~3 年以内に起こり、この疾患における分子の不均一性により、すべての患者様に再発の可能性があります。[2] こうした背景から、新しい治療アプローチ、特に免疫に基づく治療の研究が進んでいます。というのも、AML 細胞は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラス I とクラス II の両方を発現するため、先天性免疫反応と適応性免疫反応の標的となりやすいからです。[3]

In our April 2017 model spotlight, we presented data on preclinical model development of the C1498-Luc-mCherry systemic acute myeloid leukemia model in C57BL/6 mice. この株は、播種モデルとしては非常に侵攻性が高く、生物発光イメージング(BLI)による平均腫瘍倍加時間は 1.3 日、平均全生存期間は 23 日以下です。コーヴァンスの継続的な取り組みの一つに、Immuno-Oncology 分野で使用するモデルの拡張があります。ここでは、免疫チェックポイント遮断に対する反応に関するデータをご紹介します。

C1498-Luc-mCherry 腫瘍細胞分布

コーヴァンスは、細胞の尾静脈移植後に卵巣、肝臓、脊椎などの多くの組織で固形腫瘍の量が増えることを発見しました。そして、このモデルでの C1498-Luc-mCherry 腫瘍細胞の分布を確認するため、脾臓、骨髄、および卵巣とその周囲の腫瘍についてフローサイトメトリーを実施しました。サンプルは、C1498-Luc-mCherry の移植後 21 日経過した 5 匹の C57BL/6 マウスから採取しました。 As the line is a myeloid malignancy it's unsurprising that 97% of the cells analyzed were CD45+ in the tumors around the ovary. We determined, by examination of mCherry, that very few tumor cells were present in the spleen (~2%) and bone marrow (6%) while almost 78% of the CD45+ cells in the ovarian-based tumors were mCherry+ (Fig. 1A). 卵巣由来腫瘍の H&E 染色切片の病理組織評価では、形態が類似した新生細胞の均質集団が確認されました。また腫瘍は、円形から楕円形の細胞核を持つやや多形性の腫瘍細胞と、多くの有糸分裂像を持つわずかな細胞質で形成されていました(図 1B)。

図 1:C57BL/6 マウスにおける C1498-Luc-mCherry 腫瘍の構成 A:腫瘍は主に mCherry+ 細胞で構成されています。B:多形核と複数の有糸分裂像を持つ新生細胞を示す典型的な H&E 染色切片(原倍率 20 倍)。

図 1:C57BL/6 マウスにおける C1498-Luc-mCherry 腫瘍の構成 A:腫瘍は主に mCherry+ 細胞で構成されています。B:多形核と複数の有糸分裂像を持つ新生細胞を示す典型的な H&E 染色切片(原倍率 20 倍)。

シクロホスファミドに対する C1498-Luc-mCherry の反応

シクロホスファミドに対する C1498-Luc-mCherry 腫瘍モデルの感度を確認するため、白血病を含む数種類の癌の治療に使用されるさまざまな化学療法薬について、既存の疾患を持つマウスにおける試験を行いました。100mg/kg を使用した治療では完全縮小と、無腫瘍生存率(TFS)90%(9/10)という結果が得られました(図 2)。シクロホスファミドで治療した動物では寛解が見られたものの、解剖の結果、卵巣肥大と卵巣角、脾臓の変色と腹腔液が確認されました。シクロホスファミド治療では、その細胞毒性により、骨髄抑制や出血性膀胱炎、感染症への感受性の増加、不妊、他の悪性腫瘍の発症リスクなど、いくつかの有害な副作用が知られています。こうした化学療法の強い毒性が、免疫療法をはじめとする代替治療法の研究につながったと言えるでしょう。

図 2:C57BL/6 マウスにおけるシクロホスファミド治療に対する C1498-Luc-mCherry の反応。A および B:各個体マウスの生物発光シグナルの経時的変化。黒い点線は無治療対照群のシグナル中央値を示す。

図 2:C57BL/6 マウスにおけるシクロホスファミド治療に対する C1498-Luc-mCherry の反応。A および B:各個体マウスの生物発光シグナルの経時的変化。黒い点線は無治療対照群のシグナル中央値を示す。

免疫チェックポイント阻害剤に対する C1498-Luc-mCherry の反応

過去に発表されたデータによると、C1498 モデルは In vivo で PD-L1 を発現し、抗 PD-L1 抗体による遮断薬を使用することで生存率が上昇しました。[4] 今回の研究では、既存の疾患を持つ C57BL/6 マウスにおいて、抗 mPD-1 および抗 mPD-L1 免疫チェックポイント阻害剤に対する C1498-Luc-mCherry モデルの反応を解析しました。抗 mPD-1 または抗 mPD-L1 を用いた治療では、わずかに腫瘍増殖の遅延が認められ(それぞれ 3 日と 5.2 日、抗 PD-L1 群の外れ値を除く)、寿命もそれぞれ 25% および 16.7% と伸びました(図 3 および 4)。治療に関連して体重への悪影響は認められませんでしたが、すべての群で疾患の進行に伴い腹水の蓄積による腹部膨張が見られました。また、解剖では卵巣腫瘤、斑状肝、リンパ節肥大が確認されました。

図 3:C57BL/6 マウスにおけるチェックポイント阻害剤に対する C1498-Luc-mCherry の反応 A、B、C および D:各個体マウスの生物発光シグナルの経時的変化。黒い点線は無治療対照群のシグナル中央値を示す。色のついた点線は各群のシグナル中央値を示す。

図 3:C57BL/6 マウスにおけるチェックポイント阻害剤に対する C1498-Luc-mCherry の反応 A、B、C および D:各個体マウスの生物発光シグナルの経時的変化。黒い点線は無治療対照群のシグナル中央値を示す。色のついた点線は各群のシグナル中央値を示す。

 

図 4:C57BL/6 マウスにおける C1498-Luc-mCherry 播種モデルの典型的な BLI シグナルを示す画像

図 4:C57BL/6 マウスにおける C1498-Luc-mCherry 播種モデルの典型的な BLI シグナルを示す画像

PD-1/PD-L1 阻害剤を用いた AML 免疫療法に関する予備治験の報告書によると、免疫調節剤に対して適切な反応が見られたのは、多くの癌の形態と同様に、AML 患者様の特定の下位群のみでした。[5] 一般に、AML の免疫チェックポイント阻害剤による単独療法は、最小限以上の疾患を持つ患者様にとっては効果が期待できないと考えられています。その理由は、疾患の進行が速いこと、反応時間が短いこと、そして腫瘍の不均一性です。このため、臨床的には併用療法へと焦点が移りつつあります。このモデルでは抗 mPD-1 と抗 mPD-L1 への反応が非常に低いため、これらの免疫調節剤と新薬との併用について、十分に前臨床的な検討を行うことができます。

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参照

1Lamble AJ and Lind EF. 2018. Targeting the immune microenvironment in acute myeloid leukemia: A focus on T cell immunity. Front. Oncol. 8:213

2Barrett AJ and Le Blanc K. 2010. Immunotherapy prospects for acute myeloid leukemia. Cli. Exp. Immunol. 161(2); 223-232

3Austin R, Smyth MJ and Lane SW. 2016. Harnessing the immune system in acute myeloid leukemia. Crit. Rev. Oncol. Hematol. 103:62-77 

4Zhang L, Gajewski TF and Kline J. 2009. PD-1/PD-L1 interactions inhibit antitumor responses in murine acute myeloid leukemia model. Blood, 114:1545-1552

5Abdel-Wahab O and Taylor J. 2017. The potential utility of immunotherapy for AML. Hematologist, 14(5)
 
注:すべての動物管理および使用は、AAALAC 認定を取得した施設にて IACUC 手順の審査および承認を経て動物倫理規制に従い行われました。

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