E0771 同系乳癌モデル

この Tech Spotlight では、当社の初期成長と、E0771 モデルの有効性研究から得た注目のデータを紹介します。これらのデータは、E0771 細胞株の immuno-oncology 薬剤および放射線治療への反応を概説し、合理的な併用治療研究の計画を可能にします。

執筆者:

Sumithra Urs 博士 | サイエンティフィック・ディベロップメント部門サイエンティスト

日付:

2018年6月


トリプルネガティブ乳癌 (TNBC: Triple Negative Breast Cancer) は複雑で侵襲性の高い乳癌のサブタイプで、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2 の発現がないため、治療のターゲットにすることが困難です。そのため TNBC の治療法向上に対するニーズは絶えません。こうした TNBC モデルのニーズに対応するため、先月は EMT6 モデルに注目し、前臨床 Immuno-Oncology で使用するもう一つの TNBC 同系モデルである E0771 モデルを提案しました。 E0771 細胞株は C57BL/6 マウスから乳腺髄様癌を自然発症します。[1] 親の E0771 は 4T1[2] と比較すると転移が不十分で、Trp53 遺伝子と KRAS 遺伝子においてホモ変異を有しています。[3]

この Tech Spotlight では、当社の初期成長と、E0771 モデルの有効性研究から得た注目のデータを紹介します。これらのデータは、E0771 細胞株の Immuno-Oncology 薬剤および放射線治療への反応を概説し、合理的な併用治療研究の計画を可能にします。

図 1 は E0771 モデルの腫瘍増殖速度を示しています。平均倍加時間は 5-6 日以下です。腫瘍容積は着実に増加し、腫瘍に起因する体重の減少は見受けられません。この増殖ペースは、抗腫瘍反応を評価するのに3週間の治療期間猶予を可能にします。未治療腫瘍と、アイソタイプコントロール(Rat IgG2b)で治療した腫瘍の増殖パラメータは類似しています(図 1)。

図 1:皮下 E0771 腫瘍の増殖動態。 グラフは溶媒対照群とアイソタイプコントロールとの比較。
図 1:皮下 E0771 腫瘍の増殖動態。グラフは溶媒対照群とアイソタイプコントロールとの比較。

腫瘍浸潤性免疫細胞の組成

ベースライン腫瘍免疫組成をフローサイトメトリーで解析した結果を示したのが図 2 です。E0771 の免疫プロファイルは容積が 750mm3 以下の腫瘍に基づいて作成されています。 この腫瘍は、T細胞集団(CD8+ T細胞および CD4+ Tヘルパー細胞)の中でも高い CD45+ 細胞(70%)浸潤を示していることが分かります(それぞれ 6%)。制御性 T細胞集団は、CD4+ Tヘルパー細胞または CD8+ T細胞の集団よりも一貫して低い値を示しています。骨髄集団では、特性化された当社の乳癌株の中でも、E0771 腫瘍は M-MDSC が多く存在し、G-MDSC がほぼ存在しないという独特の値を示しています。今回解析した腫瘍では、M1 マクロファージは M2 マクロファージよりも常に低い値を示しました。この組成は、免疫抑制微小環境を示唆しています。

図 2:免疫細胞の浸潤を示す E0771 の腫瘍免疫プロファイル。
図 2:免疫細胞の浸潤を示す E0771 の腫瘍免疫プロファイル。

 

治療に対する反応

チェックポイント阻害抗体(抗 mPD-1、抗 mPD-L1、抗 mCTLA-4、抗 mLAG3)、共刺激抗体(抗 mGITR、抗 mOX40、抗 mCD137)、および焦点放射線による治療を受けた E0771 腫瘍を持つマウスにおいて、免疫調節薬に対する反応を評価しました。触知可能な腫瘍形成前にチェックポイント阻害剤と共刺激抗体の投与を開始し、その抗腫瘍反応を検査しました(図 3)。抗 mPD-1 治療では腫瘍が完全に除去されました。一方、抗 mPD-L1 および抗 mLAG3 では、それぞれ 12.7 日および 7.6 日という著しい腫瘍増殖遅延(TGD)が確認されました(図 3A)。同様に、共刺激抗体の抗 mGITR、抗 mCD137、抗 mOX40 による治療でも、無腫瘍生存率(TFS)が 50% 超、TGD が 27 日以上という顕著な反応が見られました(図 3B)。

ファイル
図 3:ステージ分類されていない E0771 腫瘍の抗体治療に対する反応。
図 3:ステージ分類されていない E0771 腫瘍の抗体治療に対する反応。

 

この結果から、E0771 の免疫療法に対する反応性が明らかになる(図 5)と同時に、治療開始時の腫瘍容積や成果を踏まえた治療計画の重要性も浮き彫りになりました。免疫抑制微小環境は、試験を行った大半の免疫療法の反応が限定的であった理由を説明する上で役立つかもしれません。焦点放射線は、免疫抑制微小環境に変化を及ぼす有効な治療法です。そこで、焦点放射線量 5 Gy、10 Gy、20Gy で試験を行ったところ、それぞれ TGD が 5.1 日、6.0 日、10.6 日という高い耐性が確認できました(図 6)。ベースライン放射線量の反応データを見る限り、併用療法には 10Gy の焦点放射線による治療を推奨することができるでしょう。

図 5:未分類抗体治療と確立された抗体治療に対する反応の違い。
図 5:未分類抗体治療と確立された抗体治療に対する反応の違い。
管理図を示す図 6
図 6:焦点放射線療法に対する反応。

 

E0771 - 有力な前臨床 Immuno-Oncology 乳癌モデル

TNBC は一般に免疫療法による単独療法に抵抗性を示し、免疫学的に「冷たい」癌と見なされます。これは、遺伝子変異量が少ないために免疫原性が低く、腫瘍 CD8+ T細胞の浸潤が最小限であるためです。E0771 同系乳癌モデルは、免疫細胞浸潤と免疫療法に対する反応が適度に有効であることを考えると、前臨床 Immuno-Oncology モデルとして活用できる大きな可能性があります。当社のデータは、それぞれの単独療法についてその効果をおおまかに示し、併用療法のデザインに役立つ情報を提供します。治療の開始時期や腫瘍容積は、成果の動態を見極めるうえで重要な役割を果たすため、E0771 モデルを用いた研究デザインを行う際はこの点を慎重に考慮する必要があります。

お客様の今後の Immuno-Oncology 研究に役立つ E0771 やその他の同系モデルについて、当社のサイエンティストがご相談を承ります。ぜひコーヴァンスまでお問い合わせください。

[1]Sugiura K and Stock, C (1952). Studies in a tumor spectrum. Cancer 5:382-402.

[2]Johnston CN, Smith YE, Cao Y et al., (2015). Functional and molecular characterization of E0771.LMB tumors, a new C57BL/6-mouse-derived model of spontaneously metastatic mammary cancer. Dis. Model Mech, Mar; 8(3):237-51.

[3]Yang Y, Howard HY et al., (2017). Immunocompetent mouse allograft models for development of therapies to target breast cancer metastasis. Oncotarget, May 9; 8(19):30621-30643.


注:各試験は、AAALAC 認定の施設で所定の動物倫理に従って実施されています。