Cytokine/Cytotoxicity™ パネルを用いたフローサイトメトリーによる、腫瘍浸潤リンパ球の機能分析

執筆者:

David Draper 博士

日付:

2020年8月

グランザイム B、CD107a (LAMP-1)の発現と組み合わせた炎症誘発性サイトカイン反応は、Immuno-Oncology 空間における価値あるバイオマーカーと言えます1-3。腫瘍派生のエフェクターリンパ球において、このような標的の発現を定量化できる細胞ベースのアッセイは、候補薬品の作用機序への洞察を提供します。コーヴァンスの前臨床オンコロジーグループは既製のアッセイで、T 細胞、ナチュラルキラー(NK)またナチュラルキラー T 細胞サブセット内で上記のエンドポイントを定量化する、サイトカインまたは細胞毒性の標準フローサイトメトリーパネルを提供します。このテクノロジースポットライトは Cytokine/Cytotoxicity™ パネルがどのようにin vivo研究に導入され得るか、そして前臨床の医薬品開発において、従来の免疫表現型検査と組み合わせた時、どのように強固なデータセットを構築する助けになるかを示しています。

IFNγ、TNFα、また IL-2 を含むサイトカインは腫瘍微小環境において生来の、また適応済みの免疫細胞活性化と T 細胞の増殖抗腫瘍活動を促進します。直接または間接的な仕組みによってT細胞を活性化することで腫瘍の成長を阻害する  IN VIVO  療法は、ex vivo 刺激に活発に反応するように準備刺激をされた腫瘍浸潤 T 細胞の頻度を上昇させます。準備刺激とそれに続く  IFNγ/TNFα  の生成に関しては、NK および NKT 細胞内において類似した効果が観察されています。サイトカイン生成に加え、in vivo 療法はエフェクターリンパ球に増大した毒性を誘発することがあり、細胞同士の直接接触による腫瘍細胞溶解を可能にします。この過程は、免疫細胞内に蓄積された細胞融解性顆粒から、パーフォリンのおよびグランザイムが発現および放出されることによって媒介されます。これらの毒素は細胞膜を破壊し、標的腫瘍細胞内にアポトーシスを誘発します。さらに、エフェクター細胞の表面において脱顆粒現象が CD107a の発現と重なり、結果として細胞毒性活性のマーカーとして使用することが可能になります。

上記に描写されている識別特性は、合わせると腫瘍微小環境内でのリンパ球サブセットの活性状態を検証する特性になり得ます。サイトカインおよび細胞毒性パネルは、T 細胞、NK、NKT 細胞特化の抗体を使った細胞表面免疫表現型検査と、サイトカインおよびグランザイム B 発現の細胞内染色を組み合わせることを可能にします(図表1)。

図表1:Cytokine/Cytotoxicity™  パネル

抗体/色素

説明

CD45

全血球細胞マーカー

CD3

汎T細胞マーカー

CD4

CD4+ T 細胞マーカー

CD8

CD8+ T 細胞マーカー

CD49b/CD335

ナチュラルキラーまたはナチュラルキラー T 細胞マーカー

IFNy

炎症誘発性サイトカイン

TNFa

炎症誘発性サイトカイン

IL-2*

T 細胞賦活剤 

グランザイム B

細胞傷害性マーカー

CD107a

脱顆粒マーカー

死細胞検出試薬

死細胞の除外

*IL-2 は  IL-4 および IL-17a など他のサイトカインと交換可能

 

放射線治療および抗 mCTLA-4 治療後のサイトカインおよびグランザイム B 4T1-luc 腫瘍派生エフェクター細胞の解析

サイトカインまたは細胞毒性パネルの、サイトカインおよびグランザイム B 測定の可用性は、このマウス  4T1-luc 乳癌モデルを使用したデータセットに示されています。図表1では T 細胞と NK 細胞サブセットの輪郭を描くのにゲーティング戦略を用いています。他のすべての前臨床オンコロジー フローサイトメトリ パネルにも言えることですが、解析は死細胞の除外から始まり、続いて対象の免疫サブセットを識別するための CD45+ 免疫細胞の描写に続きます(表示なし)。ここでは、PMA またはイオノマイシン刺激後の IFNy、TNFa、IL-2 そしてグランザイム B 発現の代表的なプロフィールを示します。 

図表1: フローサイトメトリによるリンパ球サブセット内の炎症誘発性サイトカイン、およびグランザイム B のゲーティング
図表1: フローサイトメトリによるリンパ球サブセット内の炎症誘発性サイトカイン、およびグランザイム B のゲーティング

4T1-luc 腫瘍の微小環境は非常に免疫抑制的で、大粒の顆粒球性骨髄由来抑制細胞浸潤によって特性付けられます(表示なし)。4T1-luc はチェックポイント阻害療法に耐性のあるモデルとして知られています。しかしながら、小動物放射線研究プラットフォーム(SARRP、Xstrahl)を介した放射線療法と併用すると、抗 mCTLA-4は4T1-luc 腫瘍の増殖阻害に改善が見られました(図表2A、左側)。腫瘍の増殖阻害は、アイソタイプ コントロール グループと比べていずれの in vivo 治療環境後にも、フローサイトメトリが腫瘍内に T 細胞または NK 細胞個体数の増加を表していない(2A、右側)ことから、治療によるエフェクター細胞のリクルート増加の効果ではないと思われます。しかし、 PMA またはイオノマイシンによる腫瘍派生細胞のex vivo 刺激は、CD8+ T 細胞に IFNy を生成する増強された能力が備わっていることを明らかにしています。加えて、対照群に比べ、NK 細胞はより高いレベルのグランザイム B を示しています。これらのデータは、放射線と抗 mCTLA-4 の併用治療がCD 8+ T 細胞と NK 細胞の活性を強化することを示唆しています。これは有効性と免疫表現型を追求する研究において機械学的マーカーを含めることの意義を示しています。

図表2:サイトカイン - 細胞毒性パネル
図表2:4T1-luc モデルにおける、エフェクター細胞内の炎症誘発性応答. 確立した  4T1-luc 腫瘍を持つ(n=6/group)BALB/c マウスに、抗 mCTLA-4 (クローン 9D9) 、焦点放射線(「RAD」; SARRP, Xstrahl Inc.)、またはその2つの組み合わせ、あるいはアイソタイプ コントロール抗体を投与しました。腫瘍は細胞単離(gentleMACS™, Miltenyi Biotec)に分離され、データ収集の前に蛍光性抗体によって分類されます。サイトカインおよびグランザイム B 解析のために、腫瘍派生細胞がブレフェルジンA が存在する ex vivo で、PMA またはイオノマイシンによって5​​​​​​​時間刺激されました。細胞は培養された後収集され、細胞内標的のために免疫染色されました。データは  Attune™ NxT(ThermoFisher Scientific 社)のフローサイトメーターによって収集され、その後 Flowjo ソフトウェア(BD 社)を使用して解析されました。

 

抗 mCTLA-4治療後のCT26腫瘍派生エフェクター細胞の脱顆粒反応の解析

CD107a は脱顆粒反応中に細胞表面に発現し、細胞毒性活性の治療誘導効果を測定するのによく用いられるマーカーとなっています。Cytokine/Cytotoxicity™ パネルはリンパ球細胞毒性における抗 mCTLA-4の影響、またマウス CT26 結腸直腸癌モデルの腫瘍増殖を調べるために用いられました。抗 mCTLA-4 で治療を受けた CT26 担癌マウスは 74% の腫瘍増殖阻害を示しました(図表 3A)。細胞毒性を検証するために、PMA またはイオノマイシンの存在下で腫瘍派生細胞のex vivo 刺激をした後、CD8+ T 細胞、NK、NKT 細胞内の CD107a およびグランザイム B 発現が測定されました。図表3B に描写されている代表的な発現プロフィール 解析が示すところによると、抗 mCTLA-4治療は、治療済みコントロール動物と比較した時、3つすべてのサブセットにおいて CD107a の発現の増加が起きています。同時に NK と NKT 細胞におけるグランザイム B 発現レベルの低下が起きています。データは、グランザイム B が NK 内に貯蔵され、NKT 細胞が脱顆粒反応の最中に減少することを示唆しています。CD8+ T 細胞グランザイム B 発現はグループ間で相違は無く、その原因としては、治療によってグランザイム B de novo 発現が起き、脱顆粒反応が低下したことが考えられる、という点に注意してください。両者を鑑みて、この表現型は、腫瘍細胞殺傷活動に直接関連する毒性と効能の、治療により誘発された強化と一致していると言えます。

図表3 - サイトカイン - 細胞毒性パネル
図表3:CT26 モデル内の細胞毒性の解析。 確立された  CT26 腫瘍 を持つ(n=10/ グループ)BALB/c マウスに抗 mPD-1 (クローン RMP1-14)、またはアイソタイプ・コントロール抗体を投与。上記に説明されているように、Ex vivo 刺激と免疫表現型検査を実施した。

 

個別対応 - 個別対応サイトカイン応答のためのパネル設定

Cytokine/Cytotoxicity™ パネルは炎症誘発性サイトカイン測定に事前設定されています。  このパネルは他のサイトカイン応答を検証するために個別対応にすることも可能です。例えば、ヘルパー CD4+  T 細胞は、 Th1, Th2, Th17 のような異なった CD4+ エフェクター表現型に分化されます。これらのサブセットは腫瘍病原性において、それぞれ異なった役割を果たします。Th1 細胞は IFNy の放出によって特徴付けられる一方で、Th2 および Th17 は それぞれ IL-4 と IL-17 の生成によって特徴付けられます。Cytokine/Cytotoxicity™ パネルは IL-4 and IL-17A を含有するよう個別対応が可能で、腫瘍の微小環境におけるヘルパー T 細胞差別化の治療効果の、機構的解析を円滑に進めることが容易になります。

Cytokine/Cytotoxicity™ パネルが、どのようにお客様の前臨床オンコロジー研究に導入できるか、その詳細についてはコーヴァンスのサイエンティストにご相談ください。

すべての動物管理および使用は、AAALAC 資格を有する施設にてIACUC 手順の審理および承認を経て動物倫理規制の元に行われています。

 

1. Clynes, R. A., & Desjarlais, J. R. (2019). Redirected T cell cytotoxicity in cancer therapy. Annual Review of Medicine70, 437-450.

2. Miller, J. S., & Lanier, L. L. (2019). Natural killer cells in cancer immunotherapy. Annual Review of Cancer Biology3, 77-103.

3. Bae, E. A., Seo, H., Kim, I. K., Jeon, I., & Kang, C. Y. (2019). Roles of NKT cells in cancer immunotherapy. Archives of Pharmacal Research, 1-6.