同系 Hepa 1-6 による肝癌のモデリング:更新情報

執筆者:

Sheri Barnes 博士 | サイエンティフィック・ディベロップメント部門ディレクター

日付:

 2019年11月

肝細胞癌(HCC:Hepatocellular Carcinoma)は世界中で 100 万人以上に影響を及ぼしており、世界で 3 番目に多い癌関連の死亡原因となっています。[1] 毎年、全世界で 800000, 名が新たにこの病気と診断され、700,000 名の患者様が亡くなっています。HCC は、東南アジアとサハラ以南のアフリカで最も発症が多くなっています。これは、同地域で B 型ヵ年、C 型肝炎ウイルスの有病率が高く、そこから慢性の肝疾患になり、その結果として HCC へと発展しやすいためです。[1,2] 米国では、2019年の新規症例数が 42,030 件、死者は 31,780 名と推定されています。[2] HCC は病期に応じて、手術、化学療法、標的療法、放射線療法で治療することができます。[4] 現在の治験では、切除不能なケースや進行期 HCC を対象にした免疫療法、モノクローナル抗体療法、腫瘍溶解性ウイルス療法などの単独もしくは併用療法の試験が行われています。[1-4] ただし、これらの治療法は腫瘍を縮小し、生存率を向上させることは実証されているものの、治癒には至っていません。 こうしたことから、治療の選択肢を広げることが求められており、 コーヴァンスでは、免疫調節薬候補の前臨床評価に使用できる同系 HCC モデル、Hepa 1-6 を開発しました。

Hepa 1-6 は C57L/J マウスで自然発生した BW7756 肝細胞癌に由来するマウス肝細胞癌で、化学的に形質転換したモデルや誘導したモデルなどの最も入手しやすいもの(BNL、A.7R.1、MH-129、MH134、MH-22A)とは対照的です。免疫応答性のあるマウスで確立された腫瘍モデルだからこそ、Hepa1-6 は免疫療法の前臨床試験にとって臨床的関連性のあるモデルなのです。

これまでの経緯

2018年の Hepa 1-6 注目のモデルでは、少量ながら確立された同モデル腫瘍細胞株における投与開始後の初期皮下増殖と反応データをご紹介しました(平均腫瘍体積 ~80-90 mm3)。 Hepa 1-6 をチェックポイント阻害薬で In vivo 処理すると、疾患初期で非常に大きな効果があり、50〜100% の持続的完全寛解という結果が得られています。しかし、薬剤候補の組み合わせという点では改善の余地が残りました。2019年はこのモデルの改良を続け、治験薬候補を組み合わせて合理的な併用戦略を打ち立てることでチェックポイント阻害を可能にしようと取り組んできました。ここでは、疾患がより進行した状態の皮下 Hepa 1-6 モデルの抗腫瘍反応データをご覧いただきます。

Hepa 1-6 におけるチェックポイント阻害の反応データ

より進行した Hepa 1-6 腫瘍モデル(平均腫瘍体積 ~130 mm3)で治療を開始したところ、薬剤候補とチェックポイント阻害剤との併用において好ましい反応が得られました。図 1 は、腫瘍増殖の全体平均(A)と個別(B〜D)のデータを示したもので、B はアイソタイプコントロール、C と D はそれぞれ、抗 mPD-1、抗 mPD-L1 の単独療法を施しています。腫瘍量が増えた状態で試験を開始した今回、単独療法ではどちらも 40% の持続的完全寛解という結果が得られました。これは、この戦略が合理的な統合戦略を試みる手段に十分なり得る一方で、モデルがさらに最適化できることも示唆しています。今後は、チェックポイント阻害の反応を中等度に維持し、理想的には今回より低い完全寛解率が得られるようモデルの改良を続けていきます。実際、平均腫瘍体積における差は少しであっても反応では大きな違いを意味することがあるため、現在この課題に対しては系統立てた段階的なアプローチを取りながら、投与開始時の平均腫瘍体積 ~150 mm3 でチェックポイント阻害の抗腫瘍効果を調べています。試験はまだ終了していませんが、すでに少ない腫瘍量で開始した時よりも低い完全寛解率が確認されています(データは掲載していません)。

図 1:平均腫瘍体積 130mm3 で開始した時のチェックポイント阻害に対する反応
図 1:平均腫瘍体積 130mm3 で開始した時のチェックポイント阻害に対する反応

 

またコーヴァンスでは、この HCC モデルの用途をさらに広げるため、ルシフェラーゼを組み込んだ Hepa 1-6 細胞株(Hepa 1-6-luc)もご用意しています。この株は現在、肝臓癌同所モデリングでの使用に向けて最適化中で、 ルシフェラーゼタグは、細胞を肝臓に直接移植した後、腫瘍の増殖を生物発光イメージング(BLI)でモニタリングするために使用します。

Hepa 1-6 モデルを肝臓試験で使用するにあたって

Hepa 1-6 モデルは、肝細胞癌研究の強力な前臨床手段となります。また、チェックポイント阻害に強く反応することや、フローサイトメトリーの分析結果は、腫瘍微小環境の免疫抑制性がごく小さいことを意味するものであり、したがって Hepa 1-6 モデルは免疫学的に「Warm(温かい)」腫瘍と考えることができます。この免疫学的に好ましい表現型は、免疫系を刺激するための治療薬を開発者している人々にとって非常に魅力的です。

お客様の今後の Immuno-Oncology 研究に役立つHepa 1-6 やその他の同系モデルについて、当社のサイエンティストがご相談を承ります。ぜひコーヴァンスまでお問い合わせください。

 

1 Medavaram, S and Zhang Y, 2018年. 「進行した肝細胞癌に対する発展途上の治療法 」 Exp Hematol Oncol 7:17.

2  https://www.cancer.net/cancer-types/liver-cancer/statistics

3 Pinter M & Peck-Radosvljevic M. 2018年. Review article: systemic treatment of hepatocellular carcinoma(総説論文:肝細胞癌の全身療法). Aliment Pharmacol Ther. 9月: 48(6): 598-609.

4 Waidmann O. 2018年.  「肝細胞癌に対する免疫療法の最近の展開」  Expert Opin Biol Ther. 8月;18(8):905-910.

 

注:各試験は、AAALAC 認定の施設で所定の動物倫理に従って実施されています。