非小細胞肺癌のモデル

執筆者:

Erin Trachet | オンコロジー部門シニア科学顧問兼プロポーザルディベロップメント部門シニアマネージャー

日付:

2018年2月

 

肺癌(小細胞と非小細胞の両方を含む)は、男性と女性の両方で2番目によく見られる癌です。新たなすべての癌のうち、肺癌は 14% を占めます。米国癌協会 (American Cancer Society) は、2018年の米国での肺癌について、次のように予測しています。

  • 新たな発症は約 234,030 件(男性 121,680 件、女性 112,350 件)
  • 肺癌による死亡は約 154,050 件(男性 83,550 件、女性 70,500 件)

肺癌には主に 2 種類あります。非小細胞肺癌 (NSCLC) と小細胞肺癌 (SCLC) です。NSCLC は肺癌の症例の 85% 近くを占めます。肺癌は主に 65 歳以上の高齢者に発症がみられます。

総合的には、男性が生涯で肺癌を発症する確率は 15 人に 1 人程度です。女性の場合、そのリスクは 17 人に 1 人となります。これらの数値には、喫煙者と非喫煙者の両方が含まれます。喫煙者ではリスクは遥かに高くなり、非喫煙者の場合はリスクが低くなります。肺癌の発症率は、男性では過去数十年にわたって減少していますが、女性の件数が減少したのはここ 10 年間のみです。減少の理由としては、大規模な禁煙キャンペーンや、若年成人層がタバコを吸ってみたいと思わないようにする取り組みの影響が大きいとされています。

肺癌も、他のすべての癌の予後と同様に早期発見が大切です。早期に発見した場合は予後は非常に良好であり、治癒する可能性さえあります。しかし、多くの人は長年にわたり無症状で生活しているため、早期発見は困難です。

NSCLC の治療法としては、手術、放射線、化学療法、標的療法、免疫療法があります。ほとんどの場合、複数の治療タイプを組み合わせて使用します。この数年間に、FDA はいくつかの新しい標的療法や免疫に基づく療法を承認しています。これらの薬品は、細胞と動物モデルを使用し、数百時間にもわたって新規治療法を評価してきた前臨床研究の成果です。

NSCLC は、毎年診断される新しい症例の割合が高いことから、研究機関にとって大きな関心のある組織型です。標的療法は広く成功していますが、獲得耐性という繰り返し発生する問題があります。前臨床研究のニーズに応えるため、コーヴァンスでは、十分に最適化された非小細胞肺癌の株をいくつか用意しています(表 1 を参照)。この「注目のモデル」では、当社のよく使用される株について、いくつかピックアップして説明します。 (当社の腫瘍モデルの全リストについてはこちらをクリック)。

肺 [NSCLC]
A549
A549-Luc-C8
Calu-1
Calu-3
HCC827
HCC827-Luc-mCh-Puro
NCI-H125
NCI-H125-Luc
NCI-H1299
NCI-H1299-p53-V138-BP100-Luc
NCI-H1650
NCI-H1703
NCI-H1703-Luc-mCh-Puro
NCI-H1975
NCI-H1975-Luc
NCI-H2110
NCI-H23
NCI-H292
NCI-H3122
NCI-H441
NCI-H460
NCI-H460-Luc2
NCI-H522
PC-9
ヒト

HCC827 は 39 歳の白人女性から分離された株です。この細胞株には、EGF 遺伝子内にエクソン 19 の欠失が含まれています。1 臨床的に、この変異株は EGFR 阻害物質に対する感度の強力な予測因子となります。前臨床モデルとして、この細胞株は新たな EGFR 阻害物質のスクリーニングに適しています。このモデルは、皮下(SC)インプラント後に最もよく使用されますが、コーヴァンスではこの株をルシフェラーゼでトランスフェクションしており、肺への直接移植後にも、生物発光画像化で疾患の進行を監視できるようにしています。腫瘍の増殖は、SC または同所性(OT)肺移植いずれかの後に確実となります。両方の移植部位における動物から動物へのばらつきはごくわずかであり、腫瘍容積は 8 日ごとに 2 倍となり(両方とも)、マウスは通常、埋め込み後約 30 日間で評価サイズ(~750mm3 または 5.0E+09 p/s)に達します(図 1, 2 [SC] および 3, 4 [OT] を参照)。

皮下 HCC827

図 1:皮下 HCC827 平均腫瘍組織量
図 1:皮下 HCC827 平均腫瘍組織量
図 2:皮下 HCC827 体重の変化率(%)
図 2:皮下 HCC827 体重の変化率(%)

同所性 HCC827

図 3:同所性 HCC827 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 3:同所性 HCC827 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 4:同所性 HCC827 体重の変化率(%)
図 4:同所性 HCC827 体重の変化率(%)

NCI-H1975

NCI-H1975 は非喫煙者の女性から樹立されました。この細胞株は、L858R/T790M の突然変異状態から、研究団体の関心を集めています。T790M が獲得した突然変異は、第 1 および第 2 世代の EGFR 阻害物質への耐性を持つ NSCLC 患者の 50-60% に見られます。1,2 したがって、このモデルは、発生した変異の変化に関係なく EGFR に結合する化合物や、不可逆的に結合する化合物など、新たな第 3 世代の EGFR 阻害物質の評価に適しています。 また、このモデルは、治療への耐性を緩和することを目的とした EGFR 阻害物質を使用する併用療法を評価する際にも役立ちます。モデルの皮下腫瘍の増殖は確実で安定しており、腫瘍容積は 3-4 日ごとに倍増して、通常は移植から約 15 日で評価サイズ(~750mm3)に達します(図 5 および 6 を参照)。

 

皮下 NCI-H1975

図 5:皮下 NCI-H1975 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 5:皮下 NCI-H1975 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 6:皮下 NCI-H1975 ​​​​​​​体重の変化率(%)
図 6:皮下 NCI-H1975 ​​​​​​​体重の変化率(%)

また、NCI-H1975 株はルシフェラーゼでトランスフェクションされており、生物発光画像化で疾患の進行を監視できます。肺から脳への転移をシミュレーションするために、この株を頭蓋内に埋め込み、臨床環境と同様に放射線で治療しました。対照腫瘍の増殖は非常に速く、動物は 14 日目には進行性疾患の兆候を示し(体重減少)、死亡にいたるまでの平均日数は 22 日でした。ただし、このモデルでは放射線療法が非常に効果的で、全体の寿命が 160% 伸び、部分的なレスポンダーが 88% 増加しました(図 7 および 図 8 を参照)。

図 7:頭蓋内 NCI-H1975 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 7:頭蓋内 NCI-H1975 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 8:頭蓋内 NCI-H1975 ​​​​​​​体重の変化率(%)
図 8:頭蓋内 NCI-H1975 ​​​​​​​体重の変化率(%)

NCI-H460

NCI-H460 は1982年に白人男性の胸膜液から分離されました。ATCC の特性に基づいており、この細胞株は健康な組織に近いレベルで p53 mRNA を発現し、野生型 EGFR を発現します。しかし、H460 には NSCLC にありがちな変異 KRAS 遺伝子も存在するため、標的療法への耐性に関連付けられる可能性があります。また、H460 にも変異 PI3CA が存在します。3 これらの遺伝的変異により、このモデルは EGFR および mTOR の併用療法の研究だけでなく、治療反応または耐性に対する KRAS 変異の評価にも適しています。当社ではこのモデルを内部で使用し、ドセタキセルなどの化学療法を評価してきました(図 9 および 10 を参照)。ドセタキセル療法への耐性は良好でしたが、効果がなく、大きな改善の余地が残りました。対照皮下腫瘍の増殖は確実で安定しており、腫瘍容積は 1-2 日ごとに倍増し、通常は移植から約 11 日で評価サイズ(~750mm3)に達します(図 9 および 10 を参照)。

図 9:皮下 NCI-H460 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 9:皮下 NCI-H460 平均腫瘍組織量​​​​​​​
図 10:皮下 NCI-H460 ​​​​​​​体重の変化率(%)
図 10:皮下 NCI-H460 ​​​​​​​体重の変化率(%)

ヒト NSCLC モデルについてご質問があれば、こちらからお問い合わせください。

1Shuhang Wang, Shundong Cang, Delong Liu J, Third-generation inhibitors targeting EGFR T790M mutation in advanced non-small cell lung cancer J Hematol Oncol.(進行性非小細胞肺癌における EGFR T790M 変異を標的とする第 3 世代阻害物質、血液腫瘍学)、2016; 9: 34。
2Yun M, Kim EO, Lee D, Kim JH, Kim J, Lee H, Lee J, Kim SH Melatonin sensitizes H1975 non-small-cell lung cancer cells harboring a T790M-targeted epidermal growth factor receptor mutation to the tyrosine kinase inhibitor gefitinib.(メラトニンは、T790M を標的とする上皮成長因子の受容体変異をチロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブに宿している H1975 非小細胞肺癌細胞を感作)。Cell Physiol Biochem(細胞生理生化学). 2014;34(3):865-72. doi: 10.1159/000366305。電子出版:2014年8月21日。
3Girard L, et al. Genome-wide allelotyping of lung cancer identifies new regions of allelic loss, differences between small cell lung cancer and non-small cell lung cancer, and loci clustering.(Girard L、他。肺癌のゲノム全体のアレロタイプ化により、アレル欠失の新しい領域、小細胞肺癌と非小細胞肺癌の違い、遺伝子座のクラスター化を特定)。 Cancer Res. 60: 4894-4906, 2000. PubMed: 10987304.
注:研究は、AAALAC の認定を受けた施設にて、該当する動物倫理規制に従って実施されました。注:研究は、AAALAC の認定を受けた施設にて、該当する動物倫理規制に従って実施されました。