PC-3 による前立腺癌モデリング:1 つのモデル、4 つのアプリケーション

執筆者:

Sheri Barnes 博士 | サイエンティフィック・ディベロップメント部門ディレクター

日付:

2019年5月

前立腺癌は男性の癌のなかで 2 番目に多く、生涯で 9 人に 1 人が前立腺癌の診断を受けています。その平均年齢 66 歳。2019年には、新たに前立腺癌と診断される患者様が 17 万 4,650 名、死者は 3 万 1,620 名になることが予想されています。癌を早期発見した患者様の予後は非常に良好で、5 年後の生存率はほぼ 100%。しかし、進行期に入るまで無症状の患者様も多く、そうしたケースではリンパ節や骨への転移が原因で治療の選択肢が限られてしまいます。進行期に入ってから診断された場合、5 年後の生存率は 30% へと大幅に減少することからも、長期的な生存率を改善するためには、前臨床の予測モデルと新しい治療法が必要不可欠です。​​​​​​​​​​​​​​

コーヴァンスでは、前立腺癌のモデリング手法を複数提供しています。PC-3 はホルモン非依存性のヒト前立腺腫瘍モデルで、研究目標に合わせて 4 つの異なる方法で採用できます。PC-3 は皮下や前脛骨に移植することができるほか、ルシフェラーゼを組み込んだ PC-3M-Luc-C6 は同所モデルや心腔内モデルとして使用することが可能。この多用途なモデルは、局所性疾患または転移性疾患という観点から見た治療法探索の機会を提供します。​​​​​​​​​​​​​​

皮下および前脛骨モデリング

おそらく、PC-3 モデルへの反応を最も端的に評価できるのは、雄ヌードマウスの脇腹皮下への移植でしょう。このモデルは信頼性が高く、前立腺癌の標準治療に用いられる抗がん剤ドセタキセルに反応します(図 1)。

図 1:皮下移植した PC-3 における腫瘍増殖の平均値
図 1:皮下移植した PC-3 における腫瘍増殖の平均値

 

脇腹皮下への移植によるモデリングは、短期間で作業が済み、コスト効率もよいことから、初期の医薬品開発の最適な手段とも言えます。ただ、皮下腔では PC-3 の癌が間質と相互に作用できないため、その他の手法に比べると予測性が低くなるかもしれません。また、PC-3 の原発性腫瘍が脇腹皮下移植後に転移することはなく、したがってこのモデルは、前立腺癌の転移抑制を目的とした研究には向いていません。

一方、前脛骨への移植では、キャリパーを使って腫瘍の成長を測定するとともに、骨の損傷について調べます。細胞の移植場所は、膝から足首までの部分を構成している脛骨と腓骨の間。 前脛骨移植における腫瘍の増殖速度は、脇腹皮下移植時のものと類似しています(図 1、図 2A)が、 CT イメージングを使って骨の損傷と回復を長期的に評価することも可能です(図 2B)。 このアプローチは、抗腫瘍反応のモニタリングという観点からだけでなく、転移で密度が低下した骨や損傷した骨を治療する医薬品の開発においても有用です。

 

前脛骨移植後の PC-3 の増殖を示したグラフと骨の CT 画像

図 2A:前脛骨移植後の PC-3 の増殖を示したグラフ
図 2A:前脛骨移植後の PC-3 の増殖を示したグラフ

図 2B:骨の CT 画像
図 2B:骨の CT 画像

 

同所および転移モデリング

PC-3M-Luc-C6 モデルでは、組み込まれた標識ルシフェラーゼを利用して、疾患の進行状態を生物発光イメージング(BLI)で長期的にモニタリングすることができます。 このモデルは、同所性 / 転移性疾患の治療にこれから使用するという薬剤候補の反応を事前に調べるのに最適です。

PC-3M-Luc-C6 を同所モデルとして導入する際は、細胞を外科的に前立腺に移植します。すると、その箇所が癌に罹患していることを示すシグナルが 2 週間以内に現れます(図 3)。動物が疾患によって死亡するのは移植の 50 日後から 65 日後。つまりそれまで少なくとも 6 週間、投与期間が確保できます。同所性移植の後期段階では、腹腔内の体液貯留による腹部膨満(〜50-90%)がよく見られます。肝臓や脾臓、腸、腹壁などに転移する腹腔内転移もわずかながら起こる可能性がありますが(30%)、前立腺癌の同所性移植による骨転移はこれまでのところ記録されていません。​​​​​​​​​​​​​​

 

PC-3M-Luc-C6 を同所性移植した後の腫瘍増殖

 

図 3A:同所性移植後の PC-3M-C6 の定量測定結果
図 3A:同所性移植後の PC-3M-C6 の定量測定結果

図 3B:典型的な BLI(生物発光イメージング)画像
図 3B:典型的な BLI(生物発光イメージング)画像

 

進行期の前立腺癌では、骨への転移が治療上の大きな課題となります。この未解決の課題に対応するため、コーヴァンスでは、PC-3M-Luc-C6 という骨転移誘導型のモデルを開発しました。骨転移誘導型では、細胞を心臓の左心室に直接注入します(心腔内移植)。この注入技術によって骨への帰巣が可能になり、7 日後ないし 10 日後に長骨と下顎に検出可能なシグナルが生成されます。そしてシグナルをもとに治療グループの病期分類を行い、試験期間中、疾患の進行状況を BLI でモニタリングします(図 4)。PC-3M-Luc-C6 を心腔内に移植したことによって発生した癌は、前述の各モデルリングと同じくドセタキセルによく反応しますが(図 4B)、骨における再増殖は皮下腫瘍よりもずっと早くに起こります。つまり反応は場所によって異なるということになります。このモデルは、全身性疾患、特に骨転移に対して治験薬を試験する上で役立ちます。

PC-3M-Luc-C6 を心腔内移植した後の腫瘍増殖

 

図 4A:心腔内移植後の PC-3M-C6 の定量測定結果
図 4A:心腔内移植後の PC-3M-C6 の定量測定結果

図 4B:典型的な BLI(生物発光イメージング)画像
図 4B:典型的な BLI(生物発光イメージング)画像

 

PC-3 モデルと PC-3M-Luc-C6 モデルは、前立癌をターゲットにするための手立てとなるアプローチを複数提供します。皮下モデルや脛骨モデルを利用して被験物質の活性を短時間で評価したり、同所 / 心腔内 PC-3M-Luc-C6 モデルでより徹底した生物発光イメージングを行ったりと、作業体制の整っているコーヴァンスでは、複数のアプローチと画像化手法を用いてお客様の前立腺癌モデリングの取り組みをサポートすることができます。​​​​​​​​​​​​​​

プロジェクトへの PC-3 や PC-3M-Luc-C6(あるいはその他のモデル)の使用をご検討の際は、当社のサイエンティストがご相談を承ります。 さらに詳しい情報については、こちらをクリックしてください。

 

 

注:各試験は、AAALAC 認定の施設で所定の動物倫理に従って実施されています。