癌免疫療法の目覚ましい再生

訪れつつある変化
現在続いている癌との闘いに、新たな希望を見出せる理由があります。癌学会で多くの人々が興味を示す刺激的なデータの発表や、重要な出版物、新薬の承認など、明らかな兆候はいくつかあります。免疫系を抗がん治療に利用する方法は、まだ完全にはその役割を果たしていませんが、今やオンコロジー医薬品開発の最も興味深い分野となっています。

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免疫監視:悪性腫瘍を監視する見えない見張り番
癌免疫療法に関する物語の第一章は、人類の希望と、常に一定であるとはいえない医学の進歩との相互作用の背景において、進化し続ける科学的洞察が果たす役割についての視点を提供するものです。けれどもその物語は、800 文字を大幅に上回る内容です。しかしながら、学び取ったいくつかの重要な教訓を考える際に、後知恵を利用することができます。 

1950 世紀半ば、免疫のパイオニアである MacFarlane Burnett とLewis Thomas は、免疫系が、悪性腫瘍の経路にある細胞の存在を絶えず警戒しているとの仮説を発表しました。この過程で、形質転換細胞が検出されて免疫系が喚起されると、これらの細胞を排除するための攻撃が始まります。その結果、癌は臨床的には明らかになりません。   癌免疫監視として知られるこの考えは重要な概念的進歩であり、治療戦略における免疫療法の中心である組織原理でもあります。

免疫監視が失敗する時
中には免疫検出と排除をすり抜ける腫瘍があり、癌が臨床的に明らかになると、免疫監視が失敗したということになります。  詳細は複雑ですが、概念レベルでは、免疫監視の失敗は検出をすり抜けられる腫瘍と、免疫系が効果的な反応を示さなかったこと両方の結果であるといえます。

蓄積された免疫監視仮説をサポートするものとして、医薬品開発戦略の可能性が明らかになりました。  すぐに、医薬品開発戦略を強化することで、免疫系を再活性化する戦略の潜在的可能性の実現という大きな希望が生まれました。  そのようにして、癌との戦いで免疫系を活性化するための、30 年にわたる努力が始まりました。

免疫療法による癌の撃退は生半可な努力ではありませんでした。以下を含む広範囲の治療的介入が試されました:

  • 癌関連抗原に基づいた、治験的癌ワクチン
  • 癌ワクチンと共に使用する免疫補強剤アジュバント
  • インターロイキン-2 とインターフェロンアルファなどの増殖抑制サイトカイン
  • 腫瘍細胞受容体をターゲットとしたモノクローナル抗体
  • 活性化免疫細胞の注入

30 年にわたる研究ののち、治験の進歩は極めて限定的だということが明らかになりました。サイトカインは非常に毒性が高いと判明しましたが、ごく少数の患者に限っては有効でした。  癌ワクチンは特に毒性はなく、抗癌の兆候を示しますが、その有効性は限定的でした。  様々な抗癌モノクローナル抗体の開発など、重要な成果はありました。2010年には、進行性前立腺癌の樹状細胞ワクチン、シプリューセル -T が、世界初の癌ワクチンとして FDA から承認を受けました。

免疫チェックポイント:新たな章の始まり
今現在、免疫応答の強度と持続時間を制限する主要なプロセスについてほとんど理解していないことは明らかです。  免疫応答の構成要素の全体像を見れば、免疫応答制御との関連性が明確になります。

臨床的な免疫応答には 3 つの臨床段階(下記の表 1 に要約。図 1 も参照) が必要なことをが分かりました。癌ブログ コーヴァンス

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図 1:癌免疫サイクル(引用: Mellman 他;Immunity 39、2013年7月25日)

大きな進歩は、T 細胞の表面上の複数の受容体は、T 細胞の活性化を起こすために、樹状細胞上の複数のリガンドからの共刺激シグナルを受信する必要があることの認識でした。  T 細胞活性化につながる主要な共刺激シグナルは、休止期のT 細胞上のその受容体 CD28 と樹状細胞上のリガンド B7 の結合によるものです。  これが、細胞障害性 T 細胞の腫瘍への増殖と遊走を含む T 細胞活性化を誘発します。

すべてが順調に見えるのですが、CD28 は B7 の唯一のパートナーではありません。  抑制性受容体、細胞障害性 T- リンパ球抗原 4 (CTLA4) は、T 細胞活性化が起こるとすぐに T 細胞の表面に発現します。CTLA4 は、CD28 よりも高い親和性で樹状細胞上の B7 と結合し、免疫応答への T 細胞の関与を制限または停止します(図 2)。

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図 2 A 。左の抗原提示細胞 (APC) 上の共刺激リガンドが、右の T 細胞の受容体と結合し、T 細胞の活性化と増殖を誘発します。休止期の T 細胞、CTLA4 は小胞内に存在します。(主要組織適合遺伝子複合体 (MHC: Major Histocompatibility Antigen)、腫瘍関連抗原 (TAA: Tumor-Associated Antigen)) B. T 細胞活性化に続き、 CTLA4 は T 細胞の表面に出現、B7 と結合し、CD28 に代わり T 細胞の増殖を阻害します。引用:Salama AK および Hodi:Clinical Cancer Research, 2011, Vol. 17, pp. 4622-4628

この阻害メカニズムは免疫チェックポイントシステムの構成要素で、免疫活性化を制限し、自己免疫の発症を予防する正常な生理学的メカニズムです。  免疫応答を超えた免疫チェックポイント制御の解明は、癌関連抗原の認識および良好なT 細胞の活性化が、持続的かつ効果的な抗腫瘍攻撃を生成するのに十分でない理由を説明するのに役立ちます。CTLA4 阻害は活性化を自由にする可能性はありましたが、抑制された T 細胞は CTLA4 を医薬品開発の合理的なターゲットにしました。

草分け的存在、イピリムマブ

抗-CTLA4 医薬品開発はイピリムマブによって実現しました。イピリムマブはモノクローナル抗体で、CTLA4 と結合し、CD28 と競合して B7 と結合する能力を阻害します。イピリムマブによる CTLA4 阻害は、転移性悪性黒色腫患者の平均生存期間を延長することで、抗がん免疫応答を回復する効果的な方法ということが示されました。このアプローチは、進行性悪性黒色腫の新しい治療法として2011年に FDA がイピリムマブを承認したことで、さらに検証された形となりました。  このことは、癌免疫療法にとって大きな節目となりました。

コーヴァンス イピリムマブ
図 3:イピリムマブの活性化のメカニズム 引用: Mellman 他、Nature Vol 480; 22 2011年12月29日)

活動データの出現を受け、免疫チェックポイント阻害薬は免疫系抑制における戦略の最前線に躍り出ました。  さらに、イピリムマブの経験は腫瘍反応と新型の毒性プロフィールの独特なパターンを明らかにしました。  これらのどちらの所見も、新しい免疫チェックポイント阻害剤の開発に重要な役割を果たすことでしょう。

医薬品開発ターゲットのために免疫チェックポイントを調べる
CD28 とそのリガンド B7 あるいは CTLA 4 は、特定の T 細胞受容体とそれに対応する抗原提示細胞上のリガンドまたは腫瘍は、腫瘍特異的な T 細胞受容体を阻害あるいは促進するという全体像の一部です (図 4)。  これに関連して、免疫応答の強度は、T 細胞活性化と増殖を促進する力と、免疫応答のそれらの部分を阻害する力のバランスの結果です。  原則的に、医薬品開発における努力は、刺激受容体の機能を増強あるいは抑制性受容体の機能を阻害することでバランスを変化させることに焦点を当てるべきであることを意味します。  これは、アゴニストまたはアンタゴニスト効果を有するモノクローナル抗体の使用を介して実現することができます(図 5) 。

 

コーヴァンス 癌の残酷さ
図 3:T 細胞と抗原提示細胞または腫瘍細胞の間の受容体 - リガンド相互作用 引用:Mellman 他、Nature Vol 480, 22:2011年12月29日

 

コーヴァンス 癌 受容体
図 4:アゴニストまたは阻害性モノクローナル抗体の作用を介した免疫チェックポイント調節の基礎 引用:Mellman 他、Nature Vol 480, 22:2011年12月29日

もう一つの重要な受容体 - リガンドのペアは、プログラムされた死 -1 (PD-1) 受容体とそのリガンドであるプログラムされた死リガンド 1 (PD-L1) です。  CTLA4 と同様、 PD-1 は活性化 T 細胞上に出現し、T 細胞による腫瘍細胞の攻撃を防ぎますが、それは別の方法で成し遂げます。PD-1 はリンパ節における T 細胞の樹状細胞活性化の部位と、腫瘍の微小環境における T 細胞の攻撃の部位で機能します。   イピリムマブが承認されてから、2 つのモノクローナル抗体、ペンブロリズマブとニボルマブはともに PD-1 の阻害薬であり、以下に要約する特定の適応症に対し承認されています(表 2 )。悪性黒色腫の比較データによると、 PD-1/PD-L1 のチェックポイント阻害の解除が、抗 -CTLA4 ターゲットよりもさらに臨床的に有効性があることが示唆されています。

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リスクはつきもの
免疫チェックポイントは免疫反応を制御する重要な生理的役割を果たしており、これが機能しない場合は、有害な炎症作用や、さらには自己免疫を引き起こす場合があります。  このため、イピリムマブの特徴的な副作用として、T 細胞 が CTLA4 の阻害薬の影響を受けず、抑制されずに腫瘍やさらにはさまざまな正常組織までをも攻撃する際に予測される現象が挙げられることは、意外なことではありません。

イピリムマブは、複数の臓器に関わるさまざまな毒性に関連しています。  これらは総称として免疫関連有害事象 (irAE: immune-related Adverse Events) と呼ばれます。  irAE の最も一般的な発現には、皮膚炎、肝炎、大腸炎、内分泌障害、神経障害などがあります。  イピリムマブや他の免疫チェックポイント阻害薬の毒性プロフィールは、次回のブログ記事で再度取り上げます。

前進するために
癌免疫療法は目覚ましい再生を遂げていますが、まだ初期段階にとどまっています。  答えの出ていない問題が数多くあり、当社はこれまでに学んだ教訓に適応すべく、現在も学び続けている状況です。 I

免疫系は、癌治療に対する他のどのアプローチとも異なる免疫療法を可能にするさまざまな特性を備えているため、癌免疫療法は特に有望です。  癌治療薬の開発に伴う一般的な問題の多くは、異なる観点から捉える必要があります。一方で、過去数十年間の標的療法開発から得られた教訓の多くは、今後の癌免疫療法の開発に関連しています。

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