感染症の医薬品開発においてカギとなる 5 つの進歩

感染症は世界の死亡率のおよそ 25% を占め、とりわけ物資の乏しい国々にとって感染症に対する医療が重大な課題となっています。昨今の研究と開発における諸々の新発見は、この難局打開の手助けとなるかも知れません。医療の世界では現在、ウイルス感染や細菌感染の生物学的構造および反応の解明に新型の分析法や生物情報学の技術が活用されており、治験での新しい治療薬の評価のためのより迅速で効果的な戦略の開発が進んでいます。

1. 教訓を活かす

C 型肝炎ウイルス (HCV) の治療薬は、病気の生物学的構造に対する理解と、医薬品開発の加速に向けた適切なリソースの優先順位決定を組み合わせた結果を強調するため、医薬品開発における画期的領域であるとよく言われます。この肝疾患の重要な原因に対する直接作用型の薬剤を含む初の根治的治療レジメンは、2011年に承認されました。以来、7 つの治療法が FDA の承認を受けており、さらにその他の有望な治療法も現在治験の最終段階にあります。

数多くのユニークな進歩があった一方で、HCV の臨床上の成功はまた、これまでの HIV 治療薬開発の教訓にも恩恵を受けています。個々の種別 HIV 治療薬が次々に開発されるなかで、進歩の次元も高まってきました。ようやくサクセスストーリーを経験した企業は、現在の HCV と他の感染症で導入されている手法、つまり、個別の薬剤よりも複数薬剤と複数製剤とを組み合わせた治療法の開発の必要性を認識するようになりました。

また、副作用の非常に少ない医薬品や、それほど抵抗なく実施できる便利なレジメン(複雑な服用スケジュールではなく 1 日 1 回で済む錠剤など)が功を奏したことで、治療のアドヒアランスも大きく改善しました。

2. 進展に応じた研究スピード

これまで HIV 感染症などの治療研究では、臨床現場で治療に対する一定期間の効果が得られるまでに何十年という歳月がかかりました。それが今、HCV およびウィルス性・細菌性病原体の対策となる新しい治療法によって開発の期間は短縮され、取り組みが一段と早く進められるようになっています。

開発が加速化すると、治療が市販化されるまでの時間は短くなりますが、それが業務上の課題になることもあります。種類の異なるウイルスと標的薬剤の開発を目的とした堅牢で複雑なアッセイは、より厳しいスケジュールと広範な治療ポートフォリオに対応するために、一段と迅速に開発しなければなりません。無数のプロセスに対応した総合的なソリューションを開発・提供できる能力が、医薬品開発プログラムを順調に進めるうえで非常に重要です。アッセイでは、特定の遺伝子配列と野生型ウィルス性・細菌性病原体の感受性プロファイル、薬剤体性、ワクチンに対して抵抗性を持つ変異体を検証することで、薬剤の有効性を調査することができます。

3. 新たなテクノロジーの発展

次世代シーケンシング (NGS) などのテクノロジーのプラットフォームは、厳格化する今日の医薬品開発プログラムの要件に応える新たな機会を提供します。それぞれにメリットのある複数の NGS プラットフォームがあり、微生物の遺伝子変異や薬剤耐性をより高い感度で調べられるようになっています。

これらの超並列シーケンシングの技術は稀少な変異体集団の検出と宿主因子変異体の同定に優れ、異種配列の標的遺伝子(HIV-1 エンベロープなど)の検証の質が一段と高いのが特徴です。コスト効率改善への期待、そして、客観的なアッセイ分析を可能にする高い処理能力とアセスメントが数多く得られるという特長を合わせると、NGS は今後も業界の飛躍的発展の原動力となるでしょう。

感染症の診断と分析はまた、測定の精度にも左右されます。超高感度のタンパク質検出法や、リアルタイム PCR よりも感度が良く絶対的なウイルス量を測定できるデジタル PCR といった技術を利用することで、微量のウイルスやウイルスの複製の検出・量測定を行うことができます。

4. 微生物同定技術の向上

臨床微生物学における技術的進歩も、感染症研究を支えてきました。最も注目すべきものに、分離菌の迅速な同定に導入されているマトリックス支援レーダー離脱 / イオン化飛行時間型 (MALDI-TOF) 質量分析 (MS) があります。FDA に提出された情報によると、MALDI-TOF は、細菌を種別で見分けるといういう強力な同定機能を持つため、感受性の研究結果がより正確に分析しやすくなり、後の承認が確かなものになります。

研究のスピードアップと信頼性を高めるものにはこのほかに、細菌とマルチプレックス PCR の同定・比較を行う 16S 遺伝子シークエンシングがあり、細菌検出と量測定がほぼリアルタイムで可能です。こうした正確で比較的コストのかからない手法は、これからも世界の微生物学研究と臨床ラボの能力を強化していくでしょう。

5. 研究と業務の両立

新たなテクノロジーが登場し、世界でより多くの患者様がそれらを利用できるようになったことで、感染症の分野に新たな機会が必ず生まれるでしょう。しかし、治験の支援という重要な課題がなくなるわけではありません。テクノロジーの力を全面的に活かして最大限の投資利益率を得るためには、全体的なコスト管理や業務の厳密な定期的チェックなど、確固とした研究運営戦略が必要です。テクノロジーとリソースの適度なバランスが今後の治験の可能性を広げるカギとなります。

感染症の治療薬とワクチン開発の将来は非常に有望です。製薬企業は、呼吸器系ウイルス(インフルエンザ、RSV、HRV)、肝炎ウイルス(HBV、HCV、HDV)、ヘルペスウイルス(CMV、HSV)、出血性ウイルス(エボラ、デング)、新型 HIV ウイルス、剤耐性を持つ菌種に対する抗生物質など、数多くのウイルス・細菌を対象に可能性を探っています。

Laboratory Corporation of America Holdings(ラボコープ)と Monogram Biosciences の医薬品開発部門で、ラボコープ・スペシャルティ・テスティング・グループのメンバーでもあるコーヴァンスは、臨床および市販後の全過程において、こうした進歩・発展に貢献し、これからも信頼性ある一貫した結果を世に送り続けていきます。

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感染症に対する健全な治験の処方箋:強力なサイエンスとシームレスなオペレーション

スピーカー:Chris Petropoulos 博士(Monogram Biosciences CSO 兼ラボコープ バイスプレジデント)、Pritty Patel (MS、MBA)( Covance Laboratories 微生物学部門ワクチン・新型免疫療法担当グローバルディレクター)

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