リスクベースモニタリング - 進化する臨床開発モニターの役割

この 10 年間、グローバル化が進んで研究も複雑になるにつれて、新しい技術と業界のガイドライン [1],7 も伴い、治験環境も大きく変化してきました。このような顕著な移り変わりに対応すべく、治験依頼者らは新たに効率アップを求めると同時に、患者様の安全とデータの質を強化することができる、より堅実なリスク管理プロセスを開発するため、治験モニタリング方法を見直す傾向にあります。

この変化の先端にあるのがリスクベースモニタリング(RBM)です。RBM とは、人やプロセス、テクノロジーを結び付けるさまざまな臨床モニタリング法をより広く定義したもので、プロジェクトチームおよび臨床開発モニター(CRA)が、治験における最も重大なリスクに集中できるようにします。 

CRA および情報技術の利用

リスクベースモニタリング (RBM) が初めて業界および規制のガイダンスをもとに登場したとき、技術を基盤としたコスト効率の良い RBM ソリューションが必要なのは明らかでした。このギャップを埋めるために、コーヴァンスXcellerate® モニタリングを開発しました。これは最先端のデータ統合を実現する受賞歴のある分析スイートで、リスクモニタリング、医療評価、統計モニタリング、データ評価などを含む完全集中型モニタリングのあらゆる面をサポートします。

この高度な実用モデルは、FDA2 および EMA4 の両ガイドラインに完全に対応し、さらに TransCelerate の原則を取り入れており、製薬企業、バイオテクノロジー企業、CRO および ARO グループがリスクベースのアプローチを治験に採用するよう促し、必然的に当業界を「堅実なモニタリング」へと導きます。

ICH GCP (E6)7 の付加項目が2016年末に公開が予定されているため、業界が技術やリスク管理プロセスの進化を受け入れるに伴い、RBM 方式の導入がさらに進むことが予想されます。それによって患者様の安全を強化して、効率とデータの質を高められるチャンスも広がります。

CRA の重要な役割は、以下を活用して同様に進化していくことです:

  • 専門的技術のさらなる活用

Xcellerate モニタリングといったリスクベースモニタリング技術プラットフォームは、施設でのパフォーマンスにおける CRA の視野を広げ、それによって患者様の安全性に一層目を向けることができるほか、臨床モニタリングでのデータの質を向上させられます。施設内でのモニタリングを優先することで、CRA はその専門的技術を磨き、さらに各施設レベルで重要なデータポイントやプロセスの順守を見直す際に活用することができます。

  • 価値の高いコンプライアンスチェックを重視

TransCelerate 社は、転記ミスをチェックするソースデータ検証 (SDV) の優先度を下げるよう勧めています。それは、その作業に要する費用が治験の約 10〜15% というのに対して、実際に修正できるデータは全体で 1.1% しかなく、得られるメリットが限られるからです。その代わりに推奨されているのが、ソースデータレビュー (SDR) です。ソースデータレビューはソース文書を審査する業務で、品質の検証のほか、プロトコルや重要な処理過程に対するコンプライアンスを確認します1。単に転記をチェックするのではなく、高重要度・低重要度のモニタリング事項についても詳細に記録することで、CRA は必須のプロセスレビューが行えるようになり、その一方でプロジェクトチームはベースラインでのモニタリング介入レベルをより柔軟にカスタマイズできるようになります。

  • アダプティブかつ即応型のモニタリング

研究の計画段階で導入したクオリティ・バイ・デザイン (QbD) の機能を足ががかりに、リスクベースモニタリング計画は価値の高いモニタリング業務を優先させ、数量化可能な施設リスクに基づいたアダプティブなモニタリング介入案を CRA 向けに作成します。データに基づいた継続的なリスクプロファイリングを、リスクプロファイルの変化に合わせて行うことで、CRA の取り組みの焦点が高リスクの研究施設に当たり、CRA が施設にいる間に行う業務の価値が最大限に高まります。 また「Xcellerate モニタリング」を利用した即応型モニタリングは、患者様受け入れ期間や研究の保守段階での効率的かつ効果的な施設内モニタリングを可能にするうえで欠かせない柔軟性を CRA に与えます。

  • 遠隔モニタリングを増やして「検査官」から「コーチ」へ

今後 CRA は、事務的な作業の管理や数量的なコンプライアンスチェックなど、実際に個々の現場に赴く必要のない業務を遠隔モニタリングや「オフサイト(現場外)」モニタリングで行うようになるでしょう。技術の発展や施設との関係が強まるにつれて、遠隔モニタリングは、柔軟で効率的な臨床モニタリング手法としてその価値が見出されています。その結果、「検査官」だった CRA の役割は「コーチ」へと変わりつつあり、プロセスのコンプライアンスと正確なデータの報告を一層徹底させるために、施設スタッフを積極的に支援するようになっています。

  • 全体を網羅する集中型モニタリング

今では、高度なデータ分析技術によって施設 / 被験者レベルの治験パフォーマンスがよく分かるようになり、臨床モニタリングチームとその施設担当の CRA も、より確かな情報に基づいて意思決定が行えるようになりました。コーヴァンスでは RBM 集中型モニタリングに「Xcellerate モニタリング」を用い、常に系統的なリスク評価を行いながら研究リスクを特定、数量化、可視化しています。このプロセスによって、CRA は個々の研究施設で効率よく価値の高いデータの確認ができるほか、施設を訪問しなくても問題やリスクに効果的に対応することが可能になります。また CRA は、医師や統計学者、データ審査担当者、RBM リードなど、集中型モニタリングの関係者にとっての施設総合窓口としての役割も果たし、これによって試験施設との関係がさらに強まります。

今後に向けた価値の最大化と CRA の可能性

確実な分析、テクノロジー、データ統合の技能に対する需要は、治験データのデジタル化とともに拡大し続けています。遠隔モニタリングや集中型モニタリングの業務がいくら増えても、施設のパフォーマンスを適切に評価して問題を管理するという CRA の役目は変わりません。的確で一貫性のある判断を下すには、やはり適性のある熟練した人材が必要なのです。

リスク管理チームに CRA 以外の新しい担当を置く必要性も考えられます。というのは、施設管理の包括的アプローチには、さまざまな集中的・特殊業務を扱う職種が関わってくるからです。そのなかには、医療関係、統計関係、データそれぞれのレビューを行うセントラルモニターなどのスペシャリストや RBM データ統合担当が含まれ、こうした人々が力を合わせて、最終的に治験の全段階でリスクを特定・低減するために、リスク管理の包括的アプローチを用いて作業に当たります。

コーヴァンスでは「Xcellerate モニタリング」により、治験のリスクを治験のステークホルダーにとって測定可能な利益に変えてきました。最初に改善されたのはデータ品質、患者様の安全、コスト効率で、臨床品質管理 (CQC) 現場検査 1 回あたりに見つかった深刻 / 重大事項の件数が平均で 20% 減、施設管理の支出が最大 36% 減、出張費が最大 18% 減、施設での eCRF ページ未処理件数 66% 減となり、施設が堅実にモニタリングされていることを裏付ける結果となりました6

RBM は、患者様の安全維持とデータ品質向上のための業界標準になるまでに普及しつつあります。そしてこの変わり行く世界が、CRA にとって臨床モニターとして活躍できるユニークな機会となっているのです。データに基づく意思決定のための分析活用から、オフサイトモニタリングの拡大による効率アップまで、リスク管理の発展と治験運営の改善に取り組む CRA の役割は今後も進化を続け、興味深いものになるでしょう。

Xcellerate インフォマティクススイートとコーヴァンスの CRA 職種紹介もぜひご覧ください。


  1. TransCelerate BioPharma Inc. リスクベースモニタリング方法論 方針説明 (Position Paper: Risk-Based Monitoring Methodology) 2013年5月30日。URL:http://www.transceleratebiopharmainc.com/assets/risk-based-monitoring/ (2014年9月02日アクセス)
  1. 業界向けガイダンス:臨床試験の監督 - リスクベースのアプローチによるモニタリング [2013年8月手順](Guidance for industry: Oversight of clinical investigations - A risk-based approach to monitoring [August 2013 Procedural] http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM269919.pdf (2014年9月09日アクセス)。
  1. ICH E6R2 エキスパート ワーキンググループ (EWG) 事業計画 - 2014年6月5日承認 (ICH E6(R2) Expert Working Group (EWG) Business Plan)(2016年5月30日アクセス)http://www.ich.org/fileadmin/Public_Web_Site/ICH_Products/Guidelines/Efficacy/E6/E6_R2_Business_Plan_July_2014.pdf
  1. リスクベースの治験品質管理に関する考察 (Reflection paper on risk based quality management in clinical trials) (EMA/269011/2013) http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2013/11/WC500155491.pdf (2015年11月30日アクセス)
  1. 医薬品の治験管理にリスクを考慮したアプローチを (Risk-adapted Approaches to the Management of Clinical Trials of Investigational Medicinal Products) - 2011年10月10日版(2015年11月30日アクセスhttps://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/343677/Risk-adapted_approaches_to_the_management_of_clinical_trials_of_investigational_medicinal_products.pdf
  1. 参考文献:コーヴァンス RBM ホワイトペーパー:2013年1月 URL:http://www.covance.com/content/dam/covance/assetLibrary/whitepapers/Transforming%20Risks-Xcellerate%20Monitoring-WPCDS007.pdf
  1. 参考文献:ICH 総合ガイダンス:ICH E6(R1) 統一付録:医薬品の臨床試験の実施基準に関するガイドライン (ICH Harmonised Guideline: Integrated Addendum to ICH E6(R2): Guideline for Good Clinical Practice) http://www.ich.org/fileadmin/Public_Web_Site/ICH_Products/Guidelines/Efficacy/E6/E6_R2__Addendum_Step2.pdf
  1. 治験における品質管理の一手法としてのソースデータ検証評価 (Evaluating Source Data Verification as a Quality Control Measure in Clinical Trials)、Therapeutic Innovation and Regulatory Science 2014年、Vol. 48(6) 671-680

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