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コーヴァンスブログ - 医薬品開発におけるイノベーションの共有
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      • 炎症性腸疾患の臨床研究 - 今後の方向性


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        公開: 2018年12月14日 3:47 PM

        クローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)に代表される炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の再発寛解型慢性炎症性疾患です1。現在のところ IBD を完全に治すことはできず、利用できる治療法(アミノサリチル酸、免疫抑制剤、バイオロジックスなど)には、有効性や耐性にばらつきがあります。こうした背景によって今、新しい IBD 治療薬の開発に大きな焦点が当たっています。これは患者様やそのご家族にとって当然喜ばしいことですが、現在の研究レベルにおいては、治験を行う際のロジスティクス上の課題も残っています。​​​​​​​

        IBD をめぐる治験環境は競争が激しく、参入者が極端に多いのが実情です。2018年10月の時点で、業界が出資する計画済み / 参加受付中の CD / UC 治験は、全世界でフェーズ II が約 76 件、フェーズ III が約 99 件あります(その他にも 9 つの CD 治験と 11 の UC 治験が進行していますが、患者様の募集は行われていません)2。これらの研究では対象となる患者様の取り合いはもとより、適応症を扱う施設をめぐっても競争が生じています。

        報告によると、北米とヨーロッパにおける IBD 患者様の数はそれぞれ 150 万人、200 万人以上です3。このデータからすれば、臨床研究で患者様が不足することは、どのフェーズにおいてもないはずです。にもかかわらず、これら二つの地域にある施設は IBD 治験で飽和状態となっています。このため、かつてないほど施設が不足しており、患者様のリクルートにも非常に長い時間がかかっています。

        ただ、IBD の世界的発生における変化が、この問題を部分的に解決することも考えられます。IBD はこれまで欧米諸国の疾患とされてきました。欧米で特に IBD が増えたのは 20 世紀後半で3、これには遺伝や都市化など数多くの要素が関わっています。ところが、欧米における発生率は今、横ばい、または低下する兆しが見られます3。反対にアジアや中南米(LATAM)では、数値はまだ欧米より低いものの、発生率が増加しつつあります。これは、中国や香港、日本、インド、ブラジル45 など、同地域の一部で急速に工業化 / 都市化が進んだことによるものと考えられます34。

        では、業界もそれに合わせてアジアや LATAM 地域で研究 / 施設を増やし始めたのでしょうか?答えは「はい」です。図 A をご覧ください。2008年 〜 2012年と 2013年 〜 2017年を比べると、IBD の臨床研究に参加した施設がアジアと LATAM でそれぞれ約 30%、72% 増えています6。大幅な増加に見えますが、2008年 〜 2012年はそれぞれ約 10%、2% と、もともとの数値が小さかったことにご注意ください。また、この記事のテーマからは外れますが、東ヨーロッパでも IBD 治験に参加する施設が増えていることに触れておきます。

        さて、こうなると、アジアと LATAM 地域において、臨床研究参加施設がさらに増加する余地があるのかという疑問が生まれます。IBD の発生率が欧米より低いとはいえ、合理的に考えるとその答えは肯定してよさそうです。発生率の低さは、上述したアジア、LATAM 地域の国々などの莫大な人口によってある程度均衡化されています。特に都市部では数値がより大きくなる傾向にあります3。今後アジア、LATAM 地域で参加施設が増える可能性は Citeline Sitetrove を見ても分かります。同サイトでは現在中国に 47 か所、インドに 59 か所、ブラジルに 46 か所の IBD  施設がリストアップされていますが、その一方で(人口が大幅に少ない)英国は 98 か所となっています。

        図 A:フェーズ II 〜 III の IBD 治験に参加している施設の割合

        出典:Citeline Sitetrove
        MENA = 中東および北アフリカ、RSA = 南アフリカ

        アジアと LATAM 地域の IBD 施設がより多く利用できるようになるだけでは、今の競争環境が生み出している患者様のリクルートの問題をすべて解決することはできません。けれども、多角的な取り組みのひとつとして、北米とヨーロッパの治験が抱える負荷をいくらか緩和できる可能性はあります。

        コーヴァンスには、対象となる特定の患者集団に合わせて最適な形で治験を実施する国と施設の選定を行い、お客様の期待に沿ったリクルートを実現するためのグローバルなインフラと独自のデータベースがあります。IBD 治験をご計画の際は、ぜひコーヴァンスをご検討ください。現時点(2018年10月)までにコーヴァンスはこれらの地域であらゆる治療領域を扱ってきており、アジアにおいては 2100 以上の施設で 180 件以上の研究(UC を含む)、LATAM 地域では 750 以上の施設で 60 件以上の研究を手がけてきました。同地域のデータ品質は優れていると言われており、過去 12 か月に行われた 53 回の治験責任医師および分担医師による検査と 13 回のコーヴァンス / スポンサー検査でも重大な問題は見つかっていません。

        記事執筆者:

        Martin Knight 理学士(優等学位)、臨床科学
        グローバル臨床開発
        炎症、感染症、一般内科(iiGM)
        戦略・計画担当シニアディレクター

        Katerina Cooper
        グローバル臨床開発
        炎症、感染症、一般内科(iiGM)担当
        医療ディレクター

        Susanne Greutter-Urban
        グローバル臨床開発
        プロジェクト管理
        GenMed 治療担当シニアディレクター

        参照

        1. https://www.immunology.org/public-information/bitesized-immunology/immune-dysfunction/inflammatory-bowel-disease
        2. Citeline Trialtrove
        3. Siew C Ng 他。Worldwide incidence and prevalence of inflammatory bowel disease in the 21st century: a systematic review of population-based studies(21 世紀における炎症性腸疾患の世界的発生とその防止:集団ベース試験の系統的レビュー)。 Lancet 2017; 390: 2769-2778
        4. Wee Khoon Ng 他。Changing epidemiological trends of inflammatory bowel disease in Asia(アジアにおける炎症性腸疾患の疫学動向の変化)。Intest Res 2016; 14(2): 111-119
        5. Behzadi P、Behzadi E、Ranjbar R。The Incidence and Prevalence of Crohn's Disease in Global Scale(世界規模でのクローン病の発生および防止)。SOJ Immunol 2015; 3(2): 1-6。
        6. Citeline Sitetrove

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