FDA 発表の「バイオマーカー適格性確認:エビデンスフレームワーク」ガイダンス案がバイオ分析分野に及ぼす影響

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FDA は2018年12月、エビデンスフレームワークおよびバイオマーカーの適格性を確保するために必要な基準に関するガイダンス案を発表しました。 これは、特定の医薬品プログラム以外でのバイオマーカーの使用に関する規制のギャップに対応するために作成されたものです。このため、このガイダンス案は2016年12月13日に制定された21世紀治療法の「医薬品開発ツールの適格性」の項(第 507 項)に対応しており、特定の利用状況(COU : Context of Use)に適合するバイオマーカーの指定を支援するデータセット(エビデンス)の開発に関するフレームワークを提供します。この利用状況において、適格なバイオマーカーは次のように定義されています:「…医薬品開発および規制審査において特定の解釈と適用の根拠となり得る…」。医療機器により測定されたバイオマーカーはこのガイダンス案の範囲に含まれていませんが、FDA は実質的にその範囲を適格なバイオマーカー以外にも広げ、IND や NDA、BLA でバイオマーカーを使用するために必要なエビデンスもその対象としています:

「このガイダンスで説明している多くの指針は、個別の医薬品開発プログラム(治験用新薬申請、新薬申請、生物製剤ライセンス申請提出など)でバイオマーカーを使用するためのエビデンスが科学的に十分であるか検討する際にも使用できる場合があります。」

こうした範囲の拡大と、このガイダンス案の後半に記されている内容は、FDA が昨年発表したバイオ分析試験法バリデーション(BMV : Bioanalytical Method Validation)に関する業界向け最終ガイダンスと一致しています。これは、リガンド結合アッセイ(LBA : Ligand Binding Assay)や質量分析により測定されたバイオマーカーを初めて規制の文脈に当てはめたものです。

このエビデンスフレームワークは、バイオマーカーの適格性を確認するために必要なエビデンスの種類と範囲を定義することを目的としています。下記は対応すべき 4 つのエリアを示します:

(1) 医薬品開発のニーズを説明する

(2) COU を定義する

(3) バイオマーカーの使用が認められた場合の潜在的利益について考慮する

(4) 医薬品開発プロブラムでバイオマーカーの使用を提案されたことを踏まえ、それに伴う潜在的リスクを考慮する

このガイダンス案では、上記のそれぞれについて詳細を記載していますが、バイオマーカーと医薬品開発におけるその使用は多岐にわたっており、そのすべてを詳細に規定することはできないため、要件に関してはあまり厳格または規範的に規定していません。すでに定義されている FDA-NIH BEST のバイオマーカー分類(診断バイオマーカー、モニタリングバイオマーカー、薬力学 / 応答バイオマーカー、予測バイオマーカー、予後バイオマーカー、安全性バイオマーカー、感受性 / リスクバイオマーカー)を使用することにより、このガイダンス案では新たな用語集を作成することによって生じる不整合や混乱の可能性を最小限に抑えています。またこの案では、分析バリデーション(アッセイパフォーマンス特性)と臨床バリデーション(バイオマーカーおよび対象となるアウトカムとの相関)とを区別しています。

文書の大部分で、バイオマーカーの測定に使用されるテストの「分析の考慮事項」について言及しています。ここでの記述は BMV のものと類似しており、アッセイは「COU によって定義された決定をサポートできるよう、十分に強固で、精度が高く、特定されたものでなければならない」としています。一方 BMV ではアッセイの 6 つの特性(正確性、精度、選択性、感度、再現性、安定性)を列記しています。興味深いのは、ガイダンス案で、アッセイは、アッセイのソースや材料、アッセイ自体、そして結果の解釈の方法から構成される結果を得るための、3 つの部分からなるシステムであると説明されている点です。この非常に詳細なアプローチでは、アッセイがバリデーション内で考慮されるだけでなく、サンプルの回収、移動および保管がプロセスの重要な要素として考慮されます。また、これらは、信頼性の高い測定結果を得るために、ただ単に考慮の必要があるだけでなく、定義する必要があります。最後の項目である解釈は、測定結果を正しく使用するため、測定結果を疾患と健康な患者の領域に置いて捉えます。これは、臨生化学の正常範囲および疾患状態範囲の実務と一貫しています。実際のアッセイについては、BMV 内で特定事柄(試薬のロット、手順など)がより詳細に定義されており、十分な文書が作成され、将来アッセイに変更があった場合にリスク評価を裏付けられるよう徹底しています。上記の 4 つのエビデンスフレームワークに加え、ガイダンス案ではプロセス中に、アッセイ条件(範囲、精度など)を指定するよう推奨し、以下の 3 つの要素を考慮するように示唆しています。

(1) 既存の測定方法のパフォーマンス特性

(2) 対象集団におけるバイオマーカーの生物学的変動(分かっている場合)

(3) 提案された COU の決定(集団を分離する時点やベースラインからの変化を判断する時点など)に影響すると見込まれるバイオマーカーの変化における最小限の規模

これらの要素は、LBA および医薬品開発を支援する質量分析、バイオ分析コミュニティーによって広く討論されています。

さらに、組織病理学の FDA ガイダンス(バイオマーカー適格性確認を支援するための組織病理学およびその関連方法の使用についての考慮事項(Considerations for Use of Histopathology and Its Associated Methodologies to Support Biomarker Qualification))は参照されていますが、BMV は参照されていません。ガイダンス案は適格性のあるバイオマーカー作成に焦点を置いているため、BMV を参照していないという事実は、FDA が業務を制限したくないと考えているか、または改訂プロセスで加筆できるようにオープンにしていると考えられます。今後、最終ガイダンスでは、明確に BMV を含めるか、または除外することが医療および薬品業界にとって有益と考えられます。これは特に、文書の背景の部分において、ガイダンス案の考慮事項が医薬品開発に実際に適用されると記述されているためです。

全体的に見て、このガイダンス案により、医薬品開発において LBA や LC-MS の担当者の現行業務が変わることはありません。しかし、それが意図する通り、FDA が求める基準について規制の内容がより明確になります。