付属書 VII~X を理解する

REACH 付属書 VII 〜 X の障壁を回避

投稿者:David Howes 博士、コーヴァンス化学物質関連法案および化学専門コンサルタント

欧州では、化学物質の製造や輸入が人体と環境に害を及ぼすことなく安全に行われるよう、化学物質の登録、評価、認可、および制限(REACH: Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)に関して規則が設けられています。この規則のドシエを見れば、対象の物質に関して通常求められる情報や、物理化学、毒性、環境動態、生態毒性の面の特性に関する必要最小限のデータが説明されています。

提出されたそれらの情報をもとに、欧州化学物質庁 (ECHA: European Chemicals Agency) が物質の安全性を判断します。しかし、データ要件は使用されている物質の量によって異なります。欧州や欧州経済地域 (EEA) で化学物質を製造あるいは輸入する場合、たいていはより複雑な情報が要求されるのが現実です。

REACH の略歴

REACH の情報要件は、前身である化学物質登録のための新規物質届出 (NONS: Notification Of New Substances) 法案から進化したものです。REACH は、同じ物質を製造または輸入する企業間で共有されるべきデータを定めた法的枠組みであり、動物実験の削減と、より広い公共社会に対する透明性を促すものです。

トン数帯とデータ要件を理解する

REACH は、付属文書によって 4 つの異なるトン数帯を定めています:

  • 1~10 トン/年間 - 付属文書 VII
  • 10~100 トン/年間 - 付属文書 VIII
  • 100~1,000 トン/年間 - 付属文書 IX
  • >1,000 トン/年間 - 付属文書 X

REACH のもと、申請者は化学物質のドシエを準備する際、一世代生殖毒性試験(OECD 試験ガイドライン 443)を実施することが要件となりました。

付属文書 VII

付属文書 VII のデータ要件は最もシンプルで、物質の蒸気圧、水溶性、可燃性などの物理化学的特性に絞られています。また、水生毒性や生分解性などの短期間の生態毒性のエンドポイント、そして in vitro 皮膚・眼刺激、皮膚腐食性と皮膚感作、突然変異と急性毒性の毒性エンドポイントの評価も要件に含まれます。

脊椎動物に対する試験は、後者の急性毒性エンドポイントに関してのみ義務付けられています。1~10 トン数帯で危険性が低いことを証明できれば情報要件が少なくなり、必要なものは物理化学的特性のデータのみになります。

付属文書 VIII

付属文書 VIII は、付属文書 VII の要件にさらに毒性エンドポイントの必要情報を加えたもので、短期間の反復投与試験(28 日間)、変異原性、生態毒性、環境動態の詳細な試験を伴う生殖 / 発達毒性スクリーニングの in vivo データが求められる場合もあります。

附属文書 IX および附属文書 X

附属文書 IX と附属文書 X は、毒性学、生態毒性学、環境動態のエンドポイントに関する、より複雑で長期的な研究を加えたものです。附属文書 IX の対象となるのは、90 日間反復投与試験、拡張一世代生殖毒性試験、出生前発達毒性試験、長期水生毒性試験、生分解試験、生物蓄積試験です。陸生種に対する試験はこのトン数帯で導入され、無脊椎動物、植物、微生物に対する短期毒性試験が義務付けられています。

また附属文書 IX では、試験の要件をさらに拡大し、第 2 の種に対する生殖毒性試験と発達毒性試験、陸生種に対する発がん性試験と長期試験もその対象としています。

附属文書 IX と附属文書 X の要件に該当する物質については、附属文書 VII と附属文書 VIII で実施済みの試験を考慮する必要があります。化学物質安全性評価の結果に左右される試験や、段階的に実施される試験もあり、いずれも試験戦略に影響が及びます。

比較的低いトン数帯では、より高いトン数帯に対して別の試験戦略を適用できる場合があります。たとえば、相互関連付け(Read-across)や化学物質のカテゴリー、証拠の重み付けや定量的構造活性相関(QSAR)モデルの使用がこれに該当します。けれども、複雑なエンドポイントでは、こうしたアプローチを採用することはほとんどありません。

一般には、綿密に練られた論理的な試験戦略を導入し、リソースや動物を最も効率的に活用できる試験計画を作成することを要求するお客様が多いでしょう。附属文書 IX と附属文書 X に規定されている、動物を使用する試験を行う場合は、それに先立って、試験提案を含む書類一式を欧州化学物質庁(ECHA : European Chemicals Agency)に提出する必要があります。提出された試験提案は ECHA 加盟国委員会の審査を受け、その結果は、REACH が明示する開示性と透明性という目標に従って、一般およびその他の関連する第三者に公開されます。

REACH の重要なポイント

試験の最適なアプローチを確立するためには、次のポイントを考慮しましょう:

  • 科学的に質の高い試験を実施し、論理的に考え抜かれたアプローチを採用すること
  • 多くの化学物質はそれぞれ独自の性質を持つため、対象となる物質の特性を把握しておくこと
  • 試験手法とその目的、方法論、結果、限界の可能性をよく理解すること
  • 可能な限り、ECHA のエンドポイント別ガイダンスに従うこと
  • ECHA 文書「CLP 分類の届出」の内容に注意を払うこと
  • できる限り動物を使わない方法を検討すること

REACH の要件への対応

異なるトン数帯のデータ要件に対応するためには、対象となる物質の特性と使用方法をしっかりと理解し、さらに REACH の要件を満たすために必要な技術と規制に関する専門知識を得る必要があります。

次の段階へ

前回の REACH 登録の期限は2018年5月でした。この期限と同時に、EU / EEA で市販された化学製品の安全性に関する積極的な情報収集も終わりました。こうして集められた幅広い物質の安全情報を網羅した巨大なデータベースが誕生し、科学と規制に対する意識の高まりを感じさせる新たな段階を迎えました。また、REACH の登録期間終了に伴い、ECHA によるドシエの精査と評価は次の段階に進みます。では、審査結果の通知を受け取ったら、どうすればよいのでしょうか?このブログシリーズの次の記事では、その質問にお答えします。